仮想温泉ぷろめてうす

 

2018

「自分はお通じが良いから不要であります」「そのカンチョウではない!」

中学生の頃、自宅の本棚に『のらくろ自叙伝』という立派な布装の本があった。昔から時代とズレた妙なものをほじくるのが好きだった私が小学校の図書館から戦前の『のらくろ』の単行本を借りてきては読んでいるのを見た親が、たまたま本屋に並んでいるのを見て買ってくれたものだと思われるが、これはおよそ子供向けではない、今考えると「大人として戦後日本を生きている、かつてののらくろファンの少年たち」に向けて書かれた、のらくろ本人の回想録の体裁をとった青春小説なのだった。「以前の漫画は、のらくろの軍隊生活を題材に漫画家が面白おかしく描いたものであって、彼自身の振り返る青春時代はあんなお気楽なものではなかった」という設定のもと、序文ではのらくろが、本筋である猛犬連隊での立身出世物語をそっちのけに、「たい焼き屋の一人娘のお銀ちゃんにフラれたこと」ばかりを延々と嘆き続け(ただし本編を読んでも彼女については「色白で気立てが良い」程度のことしか書かれておらず、どこがそんなに魅力的だったのかは皆目分からないのだが、これはこれである意味リアルな気もする)、お目付役として出てきたブル連隊長に叱られている。本編に入っても犬軍・猿軍の戦闘(というか塹壕越しの睨み合い)が双方疲れ切った状態のまま何ヶ月もグダグダ続く一方、国境地帯の山奥では犬の村と猿の村が昔からの縁でけっこう仲良くやっている描写があったり、「間諜」として潜り込んだ猿の町で親切にしてくれた後家さんの一杯飲み屋もろとも(?)巨大武器庫を爆破して逃げたり、酒保でビールを飲んでは兵器産業の都合のためだけに定期的に戦争が起こる現実を嘆く大学出の士官がいたり、除隊して民間人になった新兵時代の戦友や当時の鬼軍曹とのほろ苦い再会があったり、兵器産業と癒着してクーデターを起こそうとした幹部将校が粛清される描写があったり、そのドサクサに紛れて問題児の部下まで都合よく射殺してしまったり、70年代ニューシネマ的な組織や社会への幻滅に加えて田河先生個人的に何があったんですかと尋ねたくなるほどのアダルトな物語であった。しかしなんでこんな本を急に思い出したのかな。例によって記憶を頼りに書いているので細かいところを真に受けてはいけません。
Comments

さわやかエンディング

バカがバカを吸い寄せることでどんどんバカ濃度が高まっていくバカ・ブラックホール。いずれこの世界に存在できるバカの限界を越え、国土の大半を道連れにしながらバカ次元に旅立っていくと思われるが、後にはただ青海原に小さな島々が散らばり、蛇皮線のメロディーが静かに流れるのであった。
Comments

一年間の翻訳会社勤めで

あまり細かいことを気にせずにどんどん進めることを学んだ私は作業途中のものでも出来る端からサイトに載せてしまうのであった。というわけで「高砂名画座」に、サイト復活の際にひっそり新設された謎の小部屋「編集室」に、三本目の映画『新感染 ファイナル・エクスプレス』の搬入開始である。ちなみに私がいた翻訳部門は最近別の会社に売り飛ばされて事実上消滅したらしい。なむー。あそこではいろいろ面白い経験もしたのでいずれ書きます。

最近思いついた嫌な名前。小料理屋「おぬし」。フォークデュオ「じみ」。
Comments

七味とうがらし先生よろしく

26764916850_4121f2b105_h
大脳の周りを一定の周期で公転している小脳が数年ぶりにヤバい位置に来たらしく、急にサイトを更新したくなった。長らく使っていたGoogle日本語IMEがどうも古臭くなっているので(辞書は相変わらず優秀だと思うけれども、Google翻訳がこれだけ進化している時代に、このアカラサマな「ローマ字→漢字仮名交じり文への翻訳能力の弱さ」というか「ぼく機械だから言葉は知ってても理解してるわけじゃないよ」感はないだろうと思うわけです。社内で技術の共有とかしてないのかな)、MacOSの日本語ライブ変換を試してみたらこれが案外ヌルヌル気持ちよくて、何でもいいから日本語の文章を打ちたくなったこともあり。Wayback Machineを掘って消えていたページをサルベージしたり、「高砂名画座」に新しいセクションを追加したり。昔書いた文章は今読むとかなり恥ずかしいのだが、歳のせいか恥の感覚もだいぶ鈍くなって来ているのでまあいいや。i電話の画面ではずいぶん読みにくいサイトになっていたことにも気づいて、アップグレードだけはしていたRapidWeaverに色々直してもらう。自分の電話は今でも折りたたむやつなんだけど。
Comments

蠢動

3時間の授業の中頃に10分ほど休憩を入れるのが慣例であった。生徒の前でアホな話をして日銭を稼ぐのは楽しかったが、当時から社会的体力が恒常的に不足していた私は休憩時間中は耳や鼻から蒸気だか駄目エクトプラズムだかを吐出して教員用パイプ椅子にへたりこむのが常であった。一方、高等教育機関に受容される確率を上昇させる目的で私が主として食物摂取用の穴から発する朦朧とした音声信号を忍耐強く植物の細胞壁から作られた媒体に記録していた生徒たちは「今ぞ」とばかりに蠢動を開始し、公序良俗の維持を名目に強制隔離などの手段で事実上抑止されている生殖活動…は流石に無理としても、将来的に解禁・期待されるであろう生殖活動の予備段階としてその種の活動に必須である異性の協力者の候補にふさわしいと判断した他者に対し過去約90分に亘り動作を制限されていた下肢を交互に激しく動かすことにより物理的に接近し、1990年代中葉の東京都下における学習塾という社会的文脈において許容される限りの言語的・非言語的記号の交換を盛んに行っており、その密度と熱量には瞠目すべきものがあった。私は当時20代の半ばだったが生殖活動において彼らを下回る成果しか挙げておらず、その熱量にあてられて時折り「成程おぬしあの娘にホの字か…」などと歴史年代的にも社会文脈的にも適切とは言い難い言語的断片を呟いては青少年の不興を買ったことを記憶している。生存していればそろそろ40歳に手が届く彼らは何を記憶しているか。
Comments

黒猫

ある時期、やけに立派な黒猫に毎晩尾行された。
振り返ると路地裏の頼りない街灯を背に腰を下ろし、悠然とこちらを見ている。

「なぜついてくる?メシには不自由してないだろう」
「…余の下僕にふさわしい男かどうか見極めようと思ってな」
「勝手にしろ」
「するとも」

結局下僕に選ばれたのは私ではなく友人だったが、その後も色々試されて大変だそうな。
ちなみに奴はこんな顔だ。
Comments
Basic Blue theme by ThemeFlood