風神の悶

昔々、『風神の門』というNHKの時代劇があった。例によっていい加減な記憶でまとめると、関ヶ原の戦いで天下の大勢がとうに決したあと、大坂冬の陣・夏の陣に至る、戦国の終わりの日々を駆け抜ける(オープニングではクリスタルキング&池辺晋一郎の青春BL歌謡をバックに文字通り走りっぱなし)組織の末端のペーペーの若者としての霧隠才蔵の青春の蹉跌とムラムラとフージコちゃん、みたいな話だった。たしか中盤のクライマックスでは仲間と共に三河万歳の一座に化けて徳川家康に接近し暗殺しようとするのだが何しろ相手はどんな日本史の教科書にも必ず載っている大物、対する才蔵は小説や漫画では大人気でも教科書にはまず載らないサブカル階級の人であるから、家康は殺せども殺せども一向に死ぬ気配がなく、フラストレーションの溜まる話であった。溜まるといえば何かのはずみで着物の胸元を切られた女が意味なくスローモーションで仰反る、永井豪寸止めのエロシーンなどもあって、そこにはNHKで潤沢な予算で司馬遼太郎原作の時代劇なんか撮って田舎の両親も大喜びだけれども組織に生きる人間には決して完全な自由などないのだよというディレクターの悶々もあったのかもしれない。ヒロインは二人いて、一人はいいとこのお姫様(専属ボディガードの美形まじめ忍者が彼女にむっつり惚れているのだが彼女はもちろん才蔵に惚れていて…という設定は、まるで高橋留美子の漫画だが、毎週のように脱走する御転婆姫が泥だらけにした白い素足をムッツリ忍者がねっとり洗うサービスカットにはもっと業の深いものを感じた。いつかタランティーノにパクってほしい。)、もう一人は確か、目のスルドい女忍者で感情のない戦闘マシーン…のはずなのだが同業者のくせに青春野郎な才蔵に出会ってしまって、にわかにグラグラ、というか演技力がまだないので台詞少ないです、みたいな感じで、最近調べたら資生堂の「燃えろいい女」のキャンペーンで出てきた人なのだな。私の胡散臭い記憶によれば、彼女の初登場シーンは峠の茶屋で、きなこもちにきなこを沢山まぶして頬張ったところに、クリキンを熱唱しながら峠を駆け上がってきた才蔵に驚いて咽せる、という女忍者らしからぬものであった。つまりその、「まぶしすぎる お前との出会い」…えー、お後がよろしいようで。

このドラマのまともな解説はこちら。

ところで「歴史崩壊寸止め戦国青春忍者もの」というジャンルでは岡本喜八の『戦国野郎』もいいよ。「日本の歴史が、かーわーる(心臓記号)」 by 木下藤吉郎
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