屋内。ウェインのペントハウス。朝。

巨大な、がらんとしたペントハウス。大窓の向こうのダウンタウンの朝の風景を横切り、朝食の盆を持ったアルフレッドが通り過ぎる。彼は立ち止まり、きちんと整えられて誰も寝た形跡のないベッドを見て、溜め息をつき、踵を返す。

屋外。鉄道の操車場。朝。

保温食器を持ったアルフレッドが、ロールス・ロイスから降り立つ。線路をまたぐ陸橋に向かって歩き、ブロックの上に載って傾いたコンテナのそばで立ち止まる。錆び付いた錠と鎖を外し、コンテナの中に入る。

屋内。貨物コンテナ。直後。

アルフレッドが暗闇の中で何かしている。何かに肘をぶつける。機械音とともに床が沈み込む。アルフレッドを乗せて

屋内。バット格納庫。直後。

ンテナの床は巨大なピストンによって支えられていた。アルフレッドが降り立ったフロアは、だだっ広くて天井の低いコンクリート打ちっぱなしの空間だ。中央 にバットモービルが鎮座している。様々な機械が三次元プリンターや電動工具が散らばるハイテク空間。その一隅にウェインが座って、監視カメラが捉えた 銀行強盗の映像を見ている。

アルフレッド

ペントハウスでもお屋敷でもお休みにならないのなら、わざわざウェイン屋敷を建て直さなくてもよろしいのでは?

アルフレッドはウェインの前にコーヒーカップを置く。なんとウェインは腕の傷を自分で縫っているところだった。

アルフレッド(即座に)
(針を取り上げて)ご自分でお縫いになりますと血まみれで大変なことになりますぞ。

ウェイン
失敗から学ぶタイプなんだよ。

アルフレッド
ではもうずいぶん学ばれましたな。

ウェイン
アーマースーツが重すぎるんだ。もっと速く動きたいんだが。

アルフレッド
フォックス氏がなんとかしてくれるでしょう。(傷を見て)虎にでも襲われましたか?

ウェイン
犬さ。(目をそらして)でっかい奴だ。夕べは私の偽物も増えていた。そのくせ銃なんか持って。

アルフレッド
では見所のある偽物を何人か雇って、週末はお休みになってはいかがですか。

ウェイン
人々に模範を示したい、とは言ったけど、こういう意味じゃなかったんだが

アルフレッド
同感です。でも世の中は良くなってきていますよ。たとえば例の新しい地区検事をご覧なさい

ウェインはモニタの一つを指差す。スーツを着た美丈夫が写っている。

ウェイン
見てるさ。じっくりとね。信用できる奴かどうか知る必要がある。

アルフレッドは他の画像を見る。会合に出席している検事。選挙活動中。女の手を取ってタクシーから降ろしているところ。女はレイチェルだ!

アルフレッド
ひょっとして彼の仕事ぶりよりも人格に注目しておられるので?もしくは交際関係など。

ウェイン
レイチェルが自分の時間をどう過ごそうが、それは自由だ。

アルフレッド
ふむ。私もオフの日まで追跡されてないことを祈りますぞ。

ウェイン
するかもしれん。もし君が休みを取ればの話だが。

アルフレッドは糸を噛み切る。縫い終わった傷口を調べる。さらにウェインの肩に走る無数の古傷を見る。

アルフレッド
何事にも限度がありますぞ、ウェイン様。

ウェイン
バットマンに限界はない。

アルフレッド
旦那様にはあります。

ウェイン
知りたくはないものだ。

アルフレッド
いつか知る日が来ます。

ウェイン
「だから申し上げたではないですか」かい?

アルフレッド
私とてそんな日が来ることは望んでおりません。おそらくは。