屋内。法廷。高等裁判所。日中。

ハービー・デントが勢いよく入ってくる。準地区検事のレイチェル・ドーズは、やれやれといった表情。

デント
諸君、遅くなってすまなかった。

レイチェルはデントの方に体を傾けて、ヒソヒソと話す。

レイチェル
一体どこにいたのよ?

デント
代理をやらされるかと思った?

レイチェル
門前の小僧レベルでよければ。

デントは大きな一ドル銀貨をポケットから取り出し、にっこり笑う。

デント
よし、じゃあフェアに行こう。表なら私がやる。裏なら君だ。

デントはコインをはじき、レイチェルに見せる。表だ。

レイチェル
こんなことまでコインで決めるの?

デント
父からもらった幸運のコインさ。たしか君と初めてデートできたのも、こいつのおかげだ。

レイチェル
まじめに言ってるのよ、ハービー。こんな大事なことはコインで決めちゃだめ。

デント
決めないよ。(真顔になって)こうやって自分の運命を作ってるのさ。

デントは被告人席に立っている人物をみる。サル・マローニだ。

マローニ
市長とゴルフでもしてたのかい、検事さん?

デント
ティーオフは一時半だ。お前に無期懲役を食らわす時間は十分あるさ、サリーちゃん。

係官が証人席に痩せた男を連れてくる。ロッシだ。

屋内。法廷。高等裁判所。日中。

ロッシは水を一口飲む。デントは法廷に向かって話している。

デント
カーマイン・ファルコンがアーカム精神病院に入ったので、誰かが「ファミリー」の跡目を継がなければならなかったというわけですね?
(ロッシ、頷く)
その男は、今日法廷にいますか?
(ロッシ、また頷く)
では、それが誰だか言えますか?

デントはマローニの方を向く。マローニは無表情だ。デントはニヤリと笑う。

ロッシ
あんたの勝ちだ、カウンセラー。それは俺さ。

デントの笑顔が消える。ロッシの方に向き直る。

デント
このサルバトーレ・マローニこそがファルコンの組織の新しい首領だと、君は供述したじゃないか。

ロッシ
マローニ?あいつは傀儡さ。本当に組織を動かしてるのは俺だ。

傍聴席から笑い声。デントは判事の方を見る。

デント
証人による敵対行為、ということでよろしいですか?

ロッシ
敵対?敵対ってのはこういうのを言うんだろう。

ロッシは椅子から飛び上がって、デントの顔に銃を突きつける。傍聴人たちが悲鳴を上げる。ロッシは引き金を引く。バン!弾は当たらない。デントはつかつかと歩み寄り、銃をつかみ、ロッシに右クロスパンチを決め、銃の弾を抜いてマローニの前に置く。

デント
セラミック製28口径。中国製。本物の公僕を殺したければ、マローニさん、アメリカ製品を買うことですな。

満堂の人々が唖然として見守る中、デントはネクタイを直す。係官たちが、抵抗するロッシを証人席から引きずりだす。

デント(続けて)
さて、判事殿、続けてよろしいですか?

屋内。ロビー。デントのオフィス。日中。

興奮したレイチェルは、デントの先に立ってロビーを歩く。

レイチェル
マローニと銃のつながりを証明するのは難しいから、この件は告発できないけど、一つだけ分かったことがあるわ。あなたの命を狙ってきたってことは、もう奴らも後がないってことよ。

デント
喜んでくれて嬉しいよ、レイチェル。ところで私は大丈夫だからね。(ちょっとぐらい心配してくれよ)

レイチェルはデントを振り返る。スーツの襟を直す。

レイチェル
ハービー、ゴッサムで地区検事をするなら、鉄砲玉が飛んでくるのも仕事のうちよ。(笑って)もちろん、あれで腰が抜けちゃったのなら、今日はこれで終わりにしてもいいけど。

デント
そうはいかんさ。重大犯罪課にまでおこし願ったからね。

レイチェル
ジム・ゴードンがきてるの?私の友達だから、喧嘩しないでよ。

屋内。デントのオフィス。日中。

デントが入ってきたので、ゴードンは椅子から立ち上がる。二人は握手する。

ゴードン
なかなかいいパンチをお持ちだそうですな。サルの奴をぶち込めなかったのは残念ですが

デント
いやあ、ギャングって連中は、どうせまた近いうちにチャンスをくれるから憎めないよ。

デントはジョーカーが銀行強盗の時に残した札束を手に取る。

デント(続けて)
微量の放射線を浴びせた紙幣。市警にしては凝ったものを使ってるな。どこかから援助が?

ゴードン
いろいろな機関と協力してますから。

デント
よしてくれよ、ゴードン。「彼」に会いたいんだ。

ゴードン
バットマンは見つかり次第逮捕せよということでは

デント
重大犯罪課の屋上のサーチライト、ありゃ一体何だい?(バットシグナルのこと)

ゴードン
装備品の誤作動については、営繕課のほうと話していただければ

デントは札束を投げて机の上に戻す。苛立っているようだ。

デント
ゴッサムでマネーロンダリングをしている連中は、知っている限り私が法廷に送った。だがギャングはまだ資金に困っていない。君と君の「友達」は、この街で最後の獲物を見つけて、そいつの急所を叩こうとしている。勇気ある行動だ。私も仲間に入っていいかい?

ゴードン
この街で作戦を成功させるには、知っている人間が少ないほどいいんですよ。

デント
ゴードン、私は君が専属の特務班を持っているのが気に入らない。さらに君の特務班には、私が内調で調べねばならなかった警官がゴロゴロしている。

ゴードン
たしかにあなたは内調で名を挙げた。しかしあなたに疑われた連中を全部外したら、私は一人で仕事をしなきゃなりません。理想主義では私の仕事は勤まらんのですよ。とにかく使える連中を使うしかないんです。

デントはゴードンを見つめる。どう攻めるか考えているようだ。

デント
誰を追いかけているかも言わずに、五つの銀行に立ち入り捜査の許可を出せと?

ゴードン
銀行の名前ならお教えできますよ。

デント
わかった、近づきのしるしに許可は出そう。そうしたら私を信用してくれるかい?

ゴードン
(椅子から立ち上がって)売り込む必要はありませんよ、デントさん。あなたがゴッサムの白騎士であることは、みんな知ってます。

デント
(笑顔で)重犯罪課界隈では、なんか別のあだ名もいただいてるって聞いたけどな

ゴードンはニヤリと笑う。