屋内。レストラン。夜。

レイチェルがデントとテーブルを挟んでいる。デントはこういう店に慣れていないようだ。

デント
三週間待った上で、「私は政府で働いてるんだ」と言わないと予約できなかったよ。

レイチェル
本当?

デント
衛生局員の振りをして、営業停止をちらつかせたら、やっと取れた。

レイチェルは笑う。それからデントの肩越しにウェインが入ってくるのに気づく。美女同伴だ。

デント(続けて)
どうしたんだい?

ウェイン
レイチェル!奇遇だね。

レイチェル
そうね、ブルース。

ウェイン
レイチェル、こちらがナターシャ。ナターシャ、こちらがレイチェル。

ナターシャ(ロシアなまりで)
こんにちは。

デント
あなたが、あのブルース・ウェインありとあらゆることをレイチェルから聞いたよ。

ウェイン
それは大変だ。

レイチェル
ブルース、こちらがハーヴェイ・デント。

ウェイン
じゃあテーブルを動かしてくっつけよう。

デント
つまみだされるんじゃ?

ウェイン
文句は言わせないよ。この店は私が持ってるんだから。

レイチェル
あら、いつから?三週間前?

ウェイン
よく知ってるなあ。

レイチェル
ナターシャ、あなたってもしかして

ウェイン
モスクワ・バレエ団のプリマドンナだ。

レイチェル
来週ハーヴェイが連れて行ってくれるの。

ウェイン
ハーヴェイ、ひょっとしてバレエが好きなのかい?

レイチェル
ちがうわよ。私が行きたいって知ってるだけ。

ウェイターがテーブルを運んできて並べる。

屋内。同じ場所。しばらく後。

四人はディナーを終える。

ナターシャ
まさか。こんな街でどうやって子供を育てるのよ。

ウェイン
私はここで育った。大丈夫だったよ。(←いちばん大丈夫じゃないアンタが言うな!)

デント
ウェイン屋敷はこの街の一部って言えるのかな?

レイチェルが「やめなさいよ」という顔で一瞬デントをにらむ。

ウェイン
もちろん。柵の部分は市の管轄内さ。新任の地区検事としては、自分の力と責任の及ぶ範囲を確かめておこうと?

ナターシャ
だってこの街はマスクをつけたヒーローなんかを有り難がってるんでしょう?

デント
真っ当に正義のために働く普通の人間も、ちゃんと尊敬されてるよ。

ナターシャ
ゴッサムには、あなたみたいなヒーローが必要なのよ。ちゃんと選挙で選ばれた人間が。法律を無視して暴れる正義の味方なんて

ウェイン
そのとおり。市民がバットマンを選んだ訳じゃないね。

デント
いや、選んだのさ。我々が手をこまねいていたからこそ、あんな奴に街の運命を預けることになったんだ。

ウェインはデントを観察する。真摯な情熱がそこにあるのを見る。

ナターシャ
でもここは民主主義社会でしょ?

デント
外敵が迫ってくると、ローマ人たちは民主主義を一時停止して街を守るための指導者を選んだ。別に尊敬される仕事じゃなかった。文字通りの公僕だったんだ。

レイチェル
そして最後に共和国を守る職に就いた男は、シーザーという名前だった。彼はその権力を二度と返すことがなかった。

デント
結局のところ、英雄として早死にするか、長生きして悪人呼ばわりされるか、二つに一つなんだろうね。バットマンが誰だか知らないけど、彼も一生あの仕事をしたいとは思ってないだろう。誰だって、そんなのは嫌だ。彼もマントを受け継いでくれる人間を捜してると思うよ。

ナターシャ
あなたみたいな人を?デントさん。

デント
かもしれない。もし私にその資格があるなら。

ナターシャは手を伸ばして、デントの顔の上半分を隠す。

ナターシャ
でも、もしハーヴェイ・デントその人がバットマンだったら?

デント
私が毎晩コソコソ出かけたりしてたら、誰かさんにとっくにバレてるさ。

デントはレイチェルの手を取る。レイチェルはちらりとウェインの表情を伺う。気まずい間。

ウェイン
よし、その意気を買おう。君のためにパーティーを開いて寄付を募るよ。

デント
ブルース、それはありがたいけど、次の選挙は三年後だ。だからまだ当分は

ウェイン
分かってないな。私の友達から寄付を集めれば、君はもう一生金の心配はしなくていいんだよ。