屋外。裏通り。ホテル。ダウンタウン。日中。

高級車の列が停車して、身なりのよいギャングたちを吐き出す。

屋内。キッチン。ホテル。日中。

チェチェンが金属探知機をくぐる。機械を使っているのは二人の中国人だ。五十がらみの痩せたアフリカ系の男が、手持ちの探知機でチェックされている。この男がギャンボルだ。彼はチェチェンを認めて軽く頷く。くたびれた顔だ。

屋内。会議室。ホテル。直後。

ゴッサムの悪名高いギャングたちが一堂に会している。ドアが開き、二人の大柄な中国人がテレビを運び込む。テレビは議長の席に置かれる。

ギャングのボス
一体何だってんだ

テレビの画面が明るくなって、ラウが映る。部屋がどよめく。

ラウ(画面から)
みなさん、落ち着いて。ご存知のように、我々の隠し資金の一つが盗まれました。幸い、額は少ない方ですが六千八百万ドルです。

チェチェン
俺たちから盗もうたあ、どこの馬鹿だ?

ラウ
仕組んだ奴は、ジョーカーと名乗っているそうです。

チェチェン
どこの馬の骨だ。

マローニ
紫色の安いスーツを着て化粧をした単細胞のバカだ。問題はない。どうせ小物だ。
(ラウを見る)
問題なのは、俺たちの金が警察に追跡されてることの方だ。

(あちこちで驚きの声が上がる。)

ラウ
マローニ氏が要所に配置してくれている情報源によれば、警察はマーキングした札で我々の銀行を突き止め、今日踏み込んで押さえるつもりだそうです。

全員が大声で騒ぎ始める。

屋外。ダウンタウン各所の銀行。直後。

ゴードンが銀行の前に止めたSWATのバンの中に座っている。もう一台の車のそばにスティーブンが立っている。もう一台の車のそばにラミレス。

SWATの各チームが武器をチェックし、突入に備える。

屋内。社交クラブ。ダウンタウン。直後。

ラウはギャングたちが静まるのを待つ。

チェチェン
安全でキレイな資金洗浄を約束してたじゃないか。

ラウ
今の調子で捜査が進んだら、我々もいつもの手順になどこだわっていられません。おまけに仕事熱心な新任の地区検事がライバルを全部掃除してくれたおかげで、ほかに資金洗浄をする奴もいない。

マローニ
で、どうしようってんだ。

ラウ
すべての隠し資金を、一つの安全な場所にまとめるんです。銀行以外のね。

ギャンボル
どこだ?

ラウ
知っているのは私だけでいい。そうしないと、もしあなた方の一人が警察に押さえられた場合、全員の金が危なくなります。

チェチェン
で、あんたはどうやって警察から逃げるんだ?

ラウ
金を動かすと同時に、私は香港へ飛びます。あそこならデントには手も足も出ない。そして中国は国民を引き渡さない。

グループ・セラピー(2)

部屋の後方から、いきなり笑い声!どんどん大きくなって、しまいには部屋を圧して響き渡る。全員がそちらを向くと:

ジョーカーだ。汗で崩れた化粧が、ひどい傷を隠している。口を左右に切り広げた傷は、永遠に張り付いた屍鬼の嗤いだ。

ジョーカー
つまらぬ冗談を言うのは私の役目だろうに。

ギャンボル
うちの若い衆がな、お前の首を引っこ抜きたくてしょうがねえんだ。

ジョーカーは削ったばかりの鋭い鉛筆を取り出す。

ジョーカー
では手品など如何かな?

ドン!ジョーカーは鉛筆をテーブルに突き刺し、立てる。

ジョーカー
鉛筆を消して見せようか。

ギャンボルが合図をすると、ボディーガードがジョーカーに近づく。ジョーカーはサイドステップで身をかわし、彼の頭をつかんで、テーブルに顔から叩き付ける。

ボディーガードの体が力を失い、テーブルからずり落ちる。鉛筆は消えている。まさにマジックだ!ジョーカーは恭しく頭を下げてから、ギャンボルに向かってニヤリと笑う。

ジョーカー(続けて)
ところで、私のスーツは安くはなかったよ。分かるだろう?きみの金で買ったんだから。

ギャンボルは激怒して立ち上がる。が、チェチェンが止める。

チェチェン
座ってろ。やつの提案を聞きたい。

ジョーカーは頷いて感謝を示す。立ち上がる。

ジョーカー
一年前、この街の警官や弁護士には、きみたちに逆らう度胸が無かった。いったい何が変わったのか?きみたちの金玉が外れて落ちたのか?私のような者にさえ

ギャンボル
バケモノにさえ、だろ。

笑い声。ジョーカーは努めて無視する。

ジョーカー
のような者にさえ、答えは明らかだ。君たちが昼間っからコソコソ、グループセラピーみたいに集まっているのは何故か?どうして夜、出歩くのが怖いのか?す べてはバットマンのせいだ!彼のおかげで、ゴッサムは君たちがしょせんチンケな悪党にすぎないことを知ってしまった。そしてデントが現れたのは、まだ始ま りにすぎない。
(ラウを指して)
そして彼の「計画」についてだがバットマンは法に縛られない存在だ。どこに逃げようが、バットマンは彼を捕まえてキーキー鳴かせるだろう。
(ラウに向かってニヤリと笑い)
キーキー鳴くやつは、見ればすぐ分かるからねえ。

チェチェン
で、お前の提案は?

ジョーカー
簡単だ。バットマンを殺せ。

嘲りと失笑。

マローニ
そんなに簡単なら、どうしてまだ殺してないんだ?

ジョーカー
お袋が言ってたのさ。芸があるなら、タダでは見せるなって。

チェチェン
いくらほしい?

ジョーカー
半分。

笑い声。ジョーカーは肩をすくめる。立ち上がる。

ジョーカー
今のうちに手を打たないと、ギャンボルはお婆ちゃんに十セントあげることもできなくなるよ。

ギャンボル
道化芝居はもう沢山だ。

ギャンボルは立ち上がってジョーカーに近づく。ジョーカーがひょいとコートを広げてみせると、胸にワイヤーで縛り付けられたいくつもの爆弾が見える。ギャンボルの動きが止まる。

ジョーカー
変に騒ぎをでかくするのはやめましょうよ。

ギャンボルはジョーカーをにらむ。激しく。

ギャンボル
俺たちから盗んでタダですむと思ってるのか。よし、このピエロ野郎の死体を持ってきた奴には五十万ドル出そう。生け捕りなら百万だ。ぶっ殺す前に礼儀作法を教えてやる。

ジョーカーは肩をすくめる。集まった面々に向き直って、

ジョーカー
気が変わったら、いつでもご連絡を。

ジョーカーはふらりと出て行く。マローニはテレビ画面のラウに向かって、

マローニ
金はいつ動かせる?

屋外。ダウンタウンのあちこちの銀行。先刻の続き。

ゴードンが銀行の階段を駆け上がる。スワットチームが各銀行に突入する。

ラウ(画面外から)
もう動かしましたよ。

屋外。ゴッサム某所の地下道。直後。

中国人らしい男が大型トレーラーに金の詰まった箱を積み終わる。トラックはコンボイを組んで出て行く。

屋内。銀行大金庫。直後。
ゴードンが、ほとんど何もない金庫内に立ち尽くす。怒り狂っている。

ラウ(画面外から)
お分かりでしょうが、許可を待っている暇はありませんでした。

屋内。社交クラブ。ダウンタウン。直後。
テレビに映ったラウの顔が大きくなる。

ラウ
ご安心ください。金は大丈夫です。

ラウは既に自家用ジェット機に乗っている。