屋外。市役所。日中。
デントが小さな記者グループの前に立っている。
リポーター
中国政府は、国家としての主権を侵害されたと主張していますが。
デント
ラウ氏がどうやって戻ってきたのかは、私にも全くわかりません…
屋内。レストラン。直後。
デントの記者会見が、隅のテレビに映っている。
デント
(にっこり笑って)
…でも戻ってきたことだけはたしかです。
マローニとチェチェンがテレビを見ている。
チェチェン
命令を出した。あのピエロを雇う。
(テレビに視線を戻して)
奴は正しかった。俺たちは本当の問題を処理せにゃならん。バットマンだ。
マローニはやれやれと首を振る。ゴードンが手錠を二つぶら下げて歩いてくるのに気がつく。ゴードンはテレビに向かって頷く。
ゴードン
かっこいい検事さんだろ。
マローニ
友達の前で私に恥をかかせようってのか?
ゴードン
大丈夫。お友達も一緒に来るのさ。
ゴードンは窓の外を指す。大勢乗れそうな護送車が停まっている。
屋外。ダウンタウンや周辺のあちこち。日中。
あちこちに大型護送車が停まっている。警官たちが犯罪者をどんどん乗せる。スティーブンスがギャング団のボスを護送車に乗せる。
屋内。A法廷。ゴッサム市立裁判所。日中。
スリーロ判事
恐喝849件、詐欺246件、共謀殺人87件…
スリーロ判事がページをめくる。トランプが一枚挟まっている。ジョーカーだ。判事は「おや?」と目を留めたあと、カードを脇にどける。
スリーロ判事(続けて)
では弁護人、発言があればどうぞ。
弁護士の大群が押し合いへし合いしながら一斉に叫び出す。お手上げといった表情で速記者が天を仰ぐ。
屋内。市長のオフィス。日中。
市長、ローブ本部長、そしてゴードンが顔を上げる。デントが入ってきたからだ。
市長
デント君、何だねこのサーカスみたいな騒ぎは?
デント
ゴードンに、ちょっと悪人を逮捕してもらったんですよ。
ローブ
(報告書を見て)五百と…
ゴードン
四十九人です。
ゴードンがデントに向かって頷く。ようやく彼を認めたようだ。デントが笑顔で応える。
市長
五百四十九人の犯罪者を一度にだと?スリーロがよく引き受けたな。
デント
正義のために、と言ったら分かってくれました。つまるところ、彼女も判事ですから。
市長
スリーロをいくら焚き付けたって、すぐにものすごい数の控訴でやりかえしてくるぞ。
デント
かまいません。ボス格の奴らは保釈金を払って出てくるでしょうが、その下の連中にはそんな金もないし、裁判や控訴にかまけていればすぐに食いっぱぐれます。司法取引に応じてでも早く娑婆に戻ろうとするでしょう。それでも18ヶ月もの間、奴らは街から消える。そのあいだにどれだけ物事を変えられると思います?
市長はゴードンとローブを部屋から出て行かせる。
市長
市民は君を好いている。この作戦がうまくいくとしたら、それだけが頼りだ。しかしそれはまた、君がすべての重荷を背負うということだ。これからは誰もが君を狙ってくる。ギャングだけじゃない。政治家も、ジャーナリストも、警官も…この件で損をする奴らはみんな、君を追い落とそうとする。君にその覚悟はあるか?
(デントは笑顔で応える)
そう、覚悟はなくてはならない。奴らはあらゆる手を使ってくる。そして犯罪者たちはいずれ娑婆に戻る…
市長は体の向きを変えて窓の外を見る。静寂。
市長(続けて)
そしてその後すぐに、君も私も、何の保護もない一般人に戻…
バーン!何か黒いものが叩き付けられ、市長の目の前のガラスにひびを入れる。デントは窓に駆け寄り、外を見る…
屋外。市役所。直後。
通行人たちが上を見上げている。悲鳴を上げる者。指差す者。建物の五階…旗竿にぶら下がって、何かが揺れている…
バットマンだ。縛り首だ!死んでいる!口のまわりに赤が塗りたくられて、悪魔のような道化師の笑顔になっている。
屋外。市役所。しばらく後。
「バットマン」が旗竿からおろされる。前に出てきた偽バットマンの一人だ。胸に、トランプがナイフで刺し止められている。ジョーカーだ。ゴードンが死体に近づく。カードに何か書いてある。「本物のバットマンさん、出てきてくれるかい?」
屋内。ウェインのペントハウス。日中。
ウェインが上機嫌でリビングに入ってくる。アルフレッドがパーティーの準備を仕切っている。
ウェイン
どうだい?
アルフレッド
資金集めのパーティーはきっと大成功ですよ。
ウェイン
私がなぜハーヴェイ・デントのためにパーティーを開くと思う?
アルフレッド
旦那様がわたくしやゴッサムの悪党ども以外の人間と関わりたがるとき、目的は大抵一つしかありません。ドーズ嬢の気を惹くことです。
ウェイン
面白いけど、それは違うよ。本当にデントのためにやってるんだ。今にわか…
テレビに映っているものを見て、ウェインは注意を奪われる:いかにもニュースらしい映像で、バットマンがぶら下がっているのが見える。「バットマン死す?」という枠文字がついている。画面はスタジオのエンゲルに切り替わる。
エンゲル(ボイスオーバーで)
…警察は死体に隠されていたビデオの映像を公開しました。刺激の強い映像なので、視聴者の皆さんはご注意を。
目隠しをされた男が映る。手作りのバットマン衣装を着て、顔は痣と血にまみれている。妙に明るい、蛍光灯に照らされた部屋。
声(画面外から)
君の名前は?
男
(弱々しく)ブライアン・ダグラス。
声(画面外から)
君は本物のバットマンかね?
男
違う。
声(画面外から)
じゃあどうしてそんな格好をする?
男
バットマンは象徴だ…お前らみたいな悪党を恐れる必要はないって、俺たちに示してるんだ…
声(画面外から)
だが君は怯えてるね、ブライアン。怖くて仕方がないんだ。バットマンがゴッサムを救ったと思うかね?
ブライアンは頷くが、自信なさげだ…
声(続けて)
私を見ろ。
(ブライアンは目を上げようとしない。)
私を、見るんだ!
ブライアンは目を上げる。カメラが揺れて、ジョーカーの顔が映る。チョークのように白く、傷口の上に口紅がはみ出している。
ジョーカー
このとおり、バットマンのせいでゴッサムは狂ってしまった。あんなものは、いてはいけないんだ。だから…
(カメラをさらに覗き込み)
バットマンはマスクを取って、自首したまえ。一日でも躊躇すれば…そのぶん人が死ぬよ。今夜からだ。私は約束を守るからね。
テープはブツリと切れてノイズが映る。
ウェインはアルフレッドを見る。言葉が出ない。