屋内。ウェインのペントハウス。宵の口。
デントがレイチェルの手を取ってエレベーターから出てくる。ペントハウスの偉容と客たちの顔ぶれに圧倒されている。
レイチェル
ふふふ、珍しいもの見ちゃったなあ。泣く子も黙るハーヴィー・デントが資金提供者の皆さんを見てビビりますか。
レイチェルは誰か知り合いを見つけて走っていってしまう。
デント
レイチェル…
アルフレッド(画面外から)
すこし勇気を召し上がりますか、デント様?
デントが振り向くと、銀の盆に飲み物を載せアルフレッドがいる。
デント
ありがとう。君がアルフレッドかい?
アルフレッド
さようでございます。
デント
レイチェルがいつも話してるよ。彼女の人生を丸ごと知ってるんだって?
アルフレッド
まだ全てを見届けたわけではございません。
デント
(笑って周囲の人々を見回し)
この中に、ちょっと危ない元カレとかがいたら、教えてほしいな。
アルフレッド
「ちょっと」で済めばよろしいのですが。
言葉の意味をはかりかねているデントを置いて、アルフレッドは立ち去る。客の間に大きなどよめきが起こって、個々の会話はかき消される…デントが外を見る。
屋外。ヘリポート。
ウェインのヘリが着陸する。ぞろぞろと降りてきたスーパーモデルの一団の中にウェインがいる。
ウェイン
すまない、遅くなって…先に始めててくれてよかった!レイチェルはどこだい?
レイチェルは微かに身を縮める。ウェインは彼女を見つける。
ウェイン(続けて)
レイチェル・ドーズ…私の最も古くからの友人だ。彼女がハーヴェイとつきあってると言ったとき、私は言わねばならないことがあった…「あの恥ずかしい選挙コマーシャルの彼かい?」
笑いがわき起こる。デントは身のやり場にこまっている。
ウェイン(続けて)
「私はハーヴェイ・デントを信じる。」いいスローガンだよね、ハーヴェイ。少なくともレイチェルにはバッチリ効いた。それ以来、私はハーヴェイと、地区検事としての彼の仕事ぶりに注目してきた。そしたらどうだろう。私もハーヴェイ・デントを信じるようになった。彼が見張っていてくれるから、ゴッサムは前よりちょっと安全になった。ちょっと希望を持つようになった。さあ諸君、小切手帳を出して、われわれゴッサム市民が望む場所に彼がずっと居てくれるようにしようじゃないか…
(グラスを持ち上げ)
もちろん犯罪者にとっては災難だろうけどね。ゴッサムの明るい未来の顔に…ハーヴェイ・デントに乾杯!
デントは笑顔を作って乾杯に応える。
屋内。廊下。重大犯罪課。宵の口。
先を歩くゴードンにラミレスが追いつく。書類を持っている。
ラミレス
死体に止められていたジョーカーのことですが…鑑識が三種類のDNAを見つけました。
ゴードン
特定できたものは?
ラミレス
三つとも分かりました。
ゴードンは立ち止まる。ラミレスのほうに向き直る。
ラミレス(続けて)
DNAの主は、スリーロ判事、ハーヴェイ・デント、そしてローブ本部長です。
ゴードン
ジョーカーはターゲットを予告してるんだ。スリーロの家に警官隊を送れ。ウェルツにはデントを探させろ。二人とも身柄を保護するんだ。本部長はどこだ?
ラミレス
市役所です。
ゴードン
建物を封鎖しろ。私がつくまで、誰も出入りさせるな。
屋外。バルコニー。ウェインのペントハウス。宵の口。
ウェインがバルコニーの端に向かって歩いていき、ゴッサムを見渡す。誰かの足音が聞こえる…レイチェルだ。
レイチェル
ハーヴェイはからかわれてるって分からないかもしれないけど、私には分かるわよ。
ウェイン
(やれやれと首を振って)
あれは全部、本気で言ったんだけどな。
ウェインはレイチェルに近づく。腕を取る。
ウェイン(続けて)
いつか君が言ったろう?ゴッサムがバットマンを必要としなくなる日。もうすぐそれが来るよ。(前作で、そうなったら結婚しようみたいな約束があったらしい。すみません憶えてません。)
レイチェルがウェインを見つめる。心が揺れている。ウェインがさらに近づく。
レイチェル
それまで一人で待てって言うんじゃないでしょうね。
ウェインはレイチェルの腕を取り、彼女を見つめる。興奮している。
ウェイン
今その日が来ようとしているんだよ。ハーヴェイこそ、ゴッサムが待っていたヒーローだ。彼はこの街の犯罪者の半分を捕まえた。マスクも付けずにだよ。ゴッサムには、顔のあるヒーローが必要なんだよ。
デント(画面外から)
君はパーティーのホストだろう、ウェイン。そっちはお任せする。ちょっとレイチェルを借りていいかな?
デントのほうへ歩きながら、レイチェルはちらりとウェインに視線を送る。ウェインは二人が室内に入っていくのを見送る。