Tall, Proud, Curious


屋外。道路、ゴッサムの高級住宅地。宵の口。


スーツを着た男が二人、立派な屋敷のドアをノックする。スリーロ判事がドアを開ける。二人はバッジを見せる。

屋外。市役所。宵の口。

ゴードンが厳重に警備されたドアを通って建物に入ってゆく。

屋内。警察本部長のオフィス。宵の口。

ゴードンが入っていくと、武装警官に守られたローブがいる。

ローブ本部長
ゴードン、これは何の騒ぎだ?

ゴードンは窓をチェックする。警官たちに向き直る。

ゴードン
とりあえずこの部屋は安全だ。フロアごとに市役所全体をチェックしろ。
(ローブの方を向き)
お騒がせします。ジョーカーが本部長の命を狙っていると思われます。

ローブ
ゴードン、君にはどうしても分からんようだから言っておくが、この仕事をしていれば脅迫されるのは慣れっこになる

ローブはウイスキーの瓶を引き寄せ、引出しからタンブラーを取り出す。

ローブ(続けて)
そんなときは、こうやって対処するのが私の習慣だ

屋外。通り。ゴッサムの高級住宅地。宵。

二人目の男が判事の車のそばで待っている。

スリーロ
ゴードンがすぐに家を離れろと?

男1
奴らは危険です、判事殿。われわれも行き先は知らされていません。

彼はスリーロに封印された封筒を渡し、車のドアを開ける。

男2
乗ってから封筒を開いてください。行き先が書いてあるはずです。

スリーロは車に乗り、男たちの車が走り去るのを見る。それから封筒をあけ、紙切れを取り出す。そこには一言だけ:「上」。

スリーロの車が爆発!巨大な火の玉が車を舞い上がらせる。

通行人が爆風で道路に叩き付けられる。しばらくして火のついた何かがひらひらと彼の上に落ちる。トランプ!ジョーカーだ!

屋内。警察本部長オフィス。直後。

ローブが自分のグラスにウィスキーを注ぐ。

ローブ
夕食に帰れない理由を女房に説明してくれ。

ゴードン
しかし、ジョーカーの札には本部長のDNA

激しいノックの音。ゴードンは銃を抜いてからドアを開ける。

スティーブンス
建物の中の悪党の数はいつもと同じつまり市の職員しかいませんね。これがリストです。

ローブ
奴らはどうやって私のDNAを?

ゴードンはスティーブンスのリストを見る。

ゴードン
本部長のお宅かオフィスに入れる人間が、ティッシュかグラスを盗んだんでしょう

ゴードンはハッとして、とっさに振り返る。

ゴードン(続けて)
しまった

しかしローブは既に激しくむせている。タンブラーをデスクに取り落とす。こぼれたウィスキーは煙を上げてデスクの木材を浸食していく。

ゴードン
救急隊を呼べ!

ローブは倒れる。

省略::104
省略

屋内。厨房。ウェインのペントハウス。宵。

デントがレイチェルをつれて、人目を避けるように厨房に入っていく。

デント
あんな連中の中に置き去りにするなんて、ひどいよ。

レイチェル
ゴッサム中のギャングに狙われてる人間の台詞じゃないわね。

デント
これにくらべりゃギャングなんて可愛いもんさ。まあ狙われてると思うと、物事がはっきり見えていいけどね。

レイチェル
あら、そう?

デント
ああ。自分が絶対に失いたくないものは何か、考えさせられる。これからの人生を誰と過ごしたいかも。

レイチェルはデントを見つめる。微笑む。

レイチェル
これからの人生と来ましたか。責任重大ね。

デント
なに、ギャングにやられたらすぐ終わるさ。

レイチェル
やめて。

デント
わかった。でも真面目な話、君の返事が聞きたい。

レイチェルは彼を見つめる。

レイチェル
まだ返事はできないわ。

屋内。リビング。ペントハウス。夜。

客の半分が携帯を使っている。地区検事助手の一人が電話しながら同僚を振り返る。

地区検事助手
スリーロとローブが二人とも?

正面のドアがノックされる!アルフレッドがドアを開けると、ウェルツ刑事がバッジを見せる。アルフレッドが彼を招き入れる。ウェルツの後頭部には、ショットガンが突きつけられている!そして銃の主は

ジョーカーだ。紫のスーツと化粧。仲間を連れている。ジョーカーはウェルツを銃で殴り倒し、倒れた彼をまたいで入ってくる。ショットガンをガチャリと鳴らしながら。

ジョーカー
今晩は。今夜のお楽しみが到着しました。

屋内。厨房。ウェインのペントハウス。夜。

レイチェルがデントを見つめている。葛藤。

デント
返事できないっていうのは、「ノー」とは違うんだよね?

レイチェル
ごめんなさい、ハーヴェイ、私はただ

デント
誰か他にいるのかい?

ウェインが彼の後ろに忍び寄る。速い!

デント(続けて)
頼むからウェインじゃないと言ってくれ。あいつは全くの

レイチェルが目を見張る!忍び寄ったウェインがデントにスリーパーホールドをかけている!

レイチェル
何するのよ!

デントは意識を失い、ウェインの腕の中で崩れる。

ウェイン
奴らがデントを狙ってきた。

大広間のほうから、ショットガンの音と人々の悲鳴。ウェインはクロゼットにデントを詰め込み、取っ手にモップを差し込んで開かなくしたと思うと、レイチェルの脇を抜けて足早に去る。

ウェイン(すれ違いざま)
隠れていろ。

屋内。リビング。ウェインのペントハウス。夜。

ジョーカーとその一味が部屋になだれ込んでくる。武器を構えている。

屋内。廊下。ウェインのペントハウス。夜。

ウェインの前にジョーカーの手下が現れる。ショットガンを持っている。

手下
手を上げろ、にやけた兄ちゃん。

ウェインの腕が一閃すると、ショットガンがくるりと向きを変える。銃を握ったままの男の腕は、梃の原理でへし折られ、台尻は男の顎にめり込む。これを歩調も乱さずにやってのけたウェインは、そのまま歩み去りながら銃をバラバラに解体し、でたらめな方向に部品を放り投げる。

屋内。リビング。ウェインのペントハウス。夜。

おびえる客の間を、ジョーカーが歩く。笑っている。

ジョーカー
私の質問はただ一つ。ハーヴィー・デントはどこだ?
(静寂)
じゃあ奴のガールフレンドで手を打つかな

威厳のある紳士がジョーカーの前に立ちふさがる。

紳士
われわれは君たちのようなゴロツキを恐れない。

ジョーカーは立ち止まり、彼を見つめ、親しげな笑顔を浮かべる。

ジョーカー
あなたを見てると父を思い出すな。
(彼につかみかかり)
大嫌いだったよ、親父が。

ジョーカーは紳士の口にナイフを突っ込んでいる。

レイチェル(画面外から)
やめなさい!

ジョーカーが手を離し、紳士は倒れる。ジョーカーはレイチェルのほうを見る。

ジョーカー
今晩は、かわいこちゃん。ハーヴィーは君にホの字なのかな?
(彼女の頬にそってナイフを滑らせる。)
綺麗だねえ。ん?私の傷が怖いのかな?どうやって付いたか話してあげよう。私には妻がいた、君のように綺麗な。いつも私に、心配するなと言った。もっと笑えと言った。ギャンブルが好きだった。借金で首が回らなくなった。ある日借金取りに顔を刻まれた。手術する金はなかった。彼女はそれに耐えられなかった。
(ナイフをレイチェルの頬に押し付ける)
もう一度妻を笑わせたかった。傷なんか気にしないと言いたかった。だから私は口にカミソリを突っ込んで、自分でこの傷をつけたそしたらどうだ?
(笑い出す)
妻は私の顔に耐えられないと言い出した。
(いや、泣いているのか?)
妻は出て行った!だがね、何にでも明るい側面はある。それ以来私はいつだって笑っている。

屋内。主人の寝室。ウェインのペントハウス。夜。

ウェインが入ってくる。その音に驚いて、よろしくやっていたカップルがあわてて着衣を直す。

男客
何が起きているんだ、ウェイン?

ウェインは答えない。クロゼットに入って偽の壁を動かし、隠し部屋に入っていく。

女客
よかった隠れ場所があるのね。

ドアはぴしゃりと閉まり、機械音とともに密閉される。

男客
待ってくれ!そんな

女客
冗談じゃないわ!

屋内。リビング。ウェインのペントハウス。夜。

ジョーカーがレイチェルの頬にナイフをあてる。レイチェルが彼を殴る。ジョーカーはニヤリと笑う。

ジョーカー
なかなかファイトがあるねえ。気に入ったよ。

バットマン(画面外から)
じゃあ私のことも大好きだな。

ジョーカーが振り返る。バットマンのパンチが彼をとらえ、衝撃でジョーカーの体が回転しているうちに武器を取り上げる。ジョーカーの手下たちが飛びかかってくる。バットマンはそれを一度に二人ずつ片付けていく武器を奪い、腕を折り靴の爪先からシュパッと飛び出したナイフで、ジョーカーがバットマンを蹴る。バットマンの肋のあたりにできたアーマーの隙間を狙っている。

バットマンは部屋の反対側までジョーカーをぶん投げる。その隙に手下の一人が突っ込んでくるが、バットマンに叩きのめされる。

ジョーカーはまたもやナイフを取り出して、レイチェルの頸に当てる。

バットマン(即座に)
ナイフを捨てろ。

ジョーカー
いいとも。君がマスクを取って、みんなに顔を見せさえすれば

レイチェルはバットマンに「駄目」と首を振る。ジョーカーは片手でショットガンを持ち上げて、すぐ脇のガラスを吹き飛ばす。ジョーカーはレイチェルを窓から突き出して、今にも落とそうとする。

バットマン
彼女を放せ。

ジョーカー
(笑いながら)そんなこと言っちゃっていいのかな

ジョーカーはレイチェルを落とす!レイチェルは傾斜したガラス屋根を、端に向かってずり落ちてゆく。バットマンは彼女を追って身を躍らせる。

省略

屋外。ビル。夜。

二人は落ちる。バットマンがワイヤー銃を撃ち、レイチェルの足首をとらえる。マントの片翼を展開する。独楽のように回りながら二人は減速する。バットマンはレイチェルの身体を護るように包み込む。ドーン!通りがかりのタクシーの屋根を破壊しながら二人は着地する。

屋内。タクシー。直後。

運転手は衝撃で悲鳴を上げ、窓ガラスを下げて逃げ出す。無事だ。

屋内。タクシー。直後。

ジョーカーは車で走り去りながら、振り返る。興奮で息が荒い。汗で崩れた化粧の上を流れる血に手を触れる。運転席の背中を叩く。

運転手
デントはどうします?

ジョーカー
私は、口にしたことは必ず実行する。

屋外。タクシー。直後。

レイチェルが目を開ける。

バットマン
大丈夫か?

レイチェル
こんなのは二度といやよ。
(あたりを見回して)
ハーヴィーは

バットマン
無事だ。

レイチェルは後ろにもたれて、大きく息をつく。バットマンを見上げる。

レイチェル
ありがとう。

屋内。重大犯罪課。ゴッサム中央署。日中。

スティーブンスがゴードンに声を殺して話している。

スティーブンス
ジム、もうだめだ。

ゴードン
ラウを取り戻さない限り、ギャングどもは何をする金もない。

スティーブンス
だが、告発は時間切れだ。

スティーブンス(続けて)
こんなふうに判事も本部長も殺されたら、検察も逃げ腰だ。

ゴードン
デントはどうだ?

スティーブンス
バカじゃなければ、もうメキシコのほうへ逃げてるだろうよ。

ドアが勢いよく開く。デントだ。目が燃えている。

デント
ゴミ置き場はどこだ?

ゴードンはデントを見つめる。感銘を受けている。

屋内。特別拘留エリア。重大犯罪課。ゴッサム中央署。日中。

デントが入ってくるのに気づいてラウが顔を上げる。デントは防弾チョッキを持っている。

デント
君には証人台に立ってもらう。記録さえ残れば、後は死んでもかまわんが。

ラウ
無理だ。自分たちさえ守れないくせに。

デントは重いチョッキをラウに投げる。

デント
証言を拒否すれば、君はここには戻って来れない。郡留置所へ行ってもらう。君は計算が得意だから、何日で殺されるかすぐに分かるだろう。