屋内。バット地下壕。日中。
ウェインが沢山のモニタの前に座っている。一つ一つがジョーカーの映像を、微妙に異なる画像処理と音声処理で流している。ウェインはアルフレッドを振り返り、モニタを指差す。

ウェイン
私の命を狙っても奴らの金は戻らない。ギャングが素直に潰されてくれるとは思わなかったけど、これは何か違う。奴らは一線を越えてきた。

アルフレッド
先に一線を越えたのは旦那様ですよ。奴らを散々叩いて締め上げたから、とうとう捨て身の反撃に出てきた。自棄になっているからこそ、奴らはよく理解できない人間に頼っている。

ウェインはモニタの前から立ち上がり、バットキャビネット(バットマンのスーツが入っているケースのことか?)をせり上がらせる。

ウェイン
犯罪者は単純だよ、アルフレッド。何を狙っているかさえ分かれば理解できる。

アルフレッド
お言葉ですが、旦那様、この男だけは旦那様にも完全には理解できないかと。

アルフレッド(続けて)
(ウェインを見つめながら)
たくしは以前、ビルマに居りました。遠い昔のことです。私と友人たちはビルマ政府のために働いておりました。政府は部族のリーダーを手なずけるために、宝 石を与えていました。しかし彼らのキャラバンは、ラングーンの北の森で、しばしば山賊に襲われました。これを何とかしてくれと言われた我々は、盗まれた宝 石の手がかりを追い始めました。しかし半年経っても、その山賊と取引した者を誰一人見つけることができませんでした。

ウェイン
それは変だね。

アルフレッド
ある日私は、蜜柑ほどもある巨大なルビーで遊んでいる子供を見つけました。
(肩をすくめる)
山賊は宝石を捨てていたのです。

ウェイン
じゃあ何故キャラバンを襲う?

アルフレッド
楽しかったからですよ。金銭その他、普通の人間がほしがるものに興味がないものたちもいるのです。彼らには買収も、脅迫も、説得も交渉も通じません。
(重々しく)
世界が燃え落ちるのを見たいだけ、という連中もいるのですよ。

ウェインはアルフレッドを見つめる。やがてバットスーツに手を伸ばす。

屋外。立ち並ぶゴッサムの摩天楼たち。夜明け。

街の上空を移動すると、無数の無線通信が飛び交うのが聞こえる。ひときわ高いビルの頂きに一人立つ影にカメラは近づいていく。バットマンだ。超高性能の受信機で通信を傍受している。数限りないざわめきの中から、一つの声が立ち上がる。

パトカー(画面外から)
だから、あなたの名前は?

声(画面外から)
オーチャード八番街。ハーヴィー・デントはそこにいる。

屋外。オーチャード八番街。夜明け。

覆面パトカーと普通のパトカーがタイヤを軋らせて停車する。ゴードンとラミレスが降りて、二人の制服警官を従え建物に入っていく。

屋内。アパート。八番街。直後。

バー ン!ドアが開く。ゴードンが銃を抜いている現場に踏み込む。台所のテーブルで、男が二人死んでいる。まるでトランプの最中のように、手札を持ってい る。カードはすべてジョーカー!顔が無造作に傷つけられ、薄気味の悪い表情で固まっている。胸に彼らの運転免許証がピンで刺し止められている。

声(画面外から)
名前を調べてみろ。

ゴードン(画面外から)
(免許証を調べている)
パトリック・ハーヴィー。リチャード・デント

ラミレス
ハーヴィー・デント。

バットマン
君の部下たちが現場を荒らす前に、十分だけもらえるか。

ラミレス
私たちが現場を荒らすですって?誰のために彼らが殺されたと思ってるの

ゴードン
ラミレス。

彼女は引き下がる。バットマンは死体の脇を通って壁まで行く。流れ弾が一発、壁にめり込んでいるのに気付く。彼はベルトから小さなチェンソーのような道具を取り出し、壁に突っ込んで弾丸のまわりを切り取り始める。

ゴードン(即座に)
煉瓦の壁だぞ。砕けた弾丸から線条痕を採る気か?

バットマン
ちがう。指紋を採るんだ。

ラミレスはゴードンを見つめる。本気で言ってるんですか?ゴードンは指差す。

ゴードン
なんでもいいが、とにかく急いでくれ。次のターゲットは分かってるんだから

バットマンは見る。選挙のポスター。「ガルシア市長を再選しよう」。市長の顔に落書きされた、狂った道化師の笑い。「ハ、ハ、ハ」。

屋内。フォックスのオフィス。ウェイン・エンタープライズ。昼間。

フォックスがデスクに座っている。リース弁護士が入ってくる。

フォックス
何か御用ですか、リースさん?

リース
L.S.I.ホールディングスについて再調査しろとおっしゃったので、調べてみたら妙なことが見つかりました。

フォックス
あそこのCEOは警察に捕まっていますからね。

リース
おかしいのはL.S.I.の数字じゃない。おたくのほうです。ウェイン工業の一部門が、一夜にして丸ごと消えている。それで私は資料室に行って古いファイルを調べ始めた。

リースは折り畳んだ青写真を取り出す。フォックスに向かって、それをデスクに滑らせる。

リース(続けて)
うちの子供たちはバットマンが大好きなんですよ。私もかっこいいと思ってた。毎晩悪党どもを相手に大暴れだ。

フォックスは青写真を取って、開く。古い設計図だ。ごまかしようもなく、バットモービルである。

リース(続けて)
だが、いいとこのボンボンがヒーローごっこで遊んでるだけとなると、話は違ってくる。

リースは設計図の隅の、承認サインの入った場所を指す。

リース(続けて)
なたのプロジェクトだ。まさか坊ちゃんがパトカーを伸し餅にしてるのを知らなかったなんて言いませんよね。夕方のニュースでしょっちゅうやってるんだか ら。だんだん隠し方がズサンになってますよ。応用科学部門は小さな、潰れかけのセクションだった。それなら誰も気付かない。でもあなたは今、研究開発部門 で湯水のように金を使ってる。軍用の携帯電話を作るとか言って。今度は坊ちゃんに何を作ってあげてるんです?宇宙船ですか?

リース(続けて)
毎年一千万ドルもらえますか?私の生きてる限り。

フォックスはリースを見つめる。平然としている。青写真をたたむ。

フォックス
つまりこういうことですね。あなたはあなたのクライアントが--世界有数の富と権力を持った人物が--密かに夜な夜な悪人をぶん殴って歩いていると考えている
(大真面目に)
だから、その人物を脅迫しようというわけですな。

リースはフォックスを見つめる。フォックスは笑顔だ。青写真を滑らせてリースに戻す。

フォックス(続けて)
幸運を祈ります。

リースは青写真を見る。それからフォックスを見る。ごくりと唾を飲み込む。青写真をフォックスのほうへ戻す。

屋内。バット地下壕。日中。

ウェインはアルフレッドに、方眼を刻まれたライフル弾を渡す。アルフレッドはそれを弾倉に入れ、コンピュータに操られたガトリング砲に装着する。聴覚を保護するプロテクターを着け、スイッチを押す。

砲は唸りをあげ、台座に乗って横移動しながら、いくつか並んでいるそっくり同じ煉瓦壁のサンプルに弾を撃ち込んでいく。

アルフレッド
旦那様、もっと派手な音がしないと撃った気がしませんね。

壁のサンプルがまだ煙を上げているうちに、ウェインは近づいていく。現場で採集したサンプルを持っている。それを今作ったサンプルと比較して、二つを選んでX線スキャナーのところに持ってくる。

スキャナーは煉瓦にめり込んで砕け散ったライフル弾の三次元映像を映し出す。

屋内。応用科学部門。日中。

同じライフル弾の映像がスクリーンに映っている。フォックスがキーを叩くと、コンピュータが弾丸に刻まれた方眼を頼りに、弾丸の破片を再構成していく。

フォックス
これが現場のサンプルのスキャン

散らばった弾丸が映る。

フォックス(続けて)
それを再構成したものがこれです

フォックスがキーを叩くと、方眼の刻まれていない弾丸が組み立てられていく。パズルのように仮組みされた弾丸の映像を、ウェインがくるりと回転させる。

ウェイン
そしてこれが親指の指紋だ。

フォックスがスクリーンを見て、ほう、という表情になる。考え込む。

フォックス
コピーを差し上げます。
(ふと気がかりなことを思い出して)
ウェイン様、開発部門に何か新しい仕事を与えたんですか?

ウェイン
うん。政府の通信プロジェクトだ。

フォックス
政府からそんな話は来てなかったと思いますが。具体的にはどんな

ウェイン
ルシウス(フォックスのファーストネーム)。この件は私の胸三寸ということで

フォックス
承知しました。

フォックスは立ち去っていくウェインを見る。不安げだ。

屋内。バット地下壕。直後。

ウェインは指紋を調べる。

アルフレッド
あらゆるデータベースと照合して、可能性のあるものを選びます。

ウェインは席を立ち、アルフレッドを座らせる。

ウェイン
住所も調べてくれ。

ウェイン(続けて)
パークサイド周辺が怪しい。

ウェインが水圧駆動のドアを開けると、ピカピカの MVアグスタ・ブルターレ が現れる。ウェインはそのバイクをリフトに乗せ

アルフレッド
見つかりました。メルヴィン・ホワイト。加重暴行罪。アーカム精神病院への入院二回。ランドルフ・アパート1502、ステート街からちょっと外れたところ

ウェイン
パレードを見下ろせる建物だ。

ウェインとバイクはリフトで上がっていく。

屋外。パークサイド通り。日中。

通りは通行止めになっている。見物客が歩道を埋めている。警官たちが礼装で行進していく。エンゲルが歩道に立ってレポートしている。

エンゲル
バットマンからは何の連絡もありませんローブ本部長を悼むパレードの最中にも、警官たちは今日市長を暗殺すると宣言したジョーカーが本当に実行するのか考えていることでしょう

立ち並ぶビルの屋上では、警察の狙撃手が人ごみを睨んでいる。ゴードンが無線機を使う。

ゴードン
上からの眺めは?

狙撃手
しっかり見張ってます。でも正直なところ狙撃に使えそうな窓が多すぎますね。

ゴードンは市長の演壇を見下ろす無数のビルを見上げる。

屋外。ゴッサムの街路。直後。

ウェインがドゥカティのバイクを駆り車の間をすり抜けてゆく。交通封鎖のバリケードのそばでバイクを停め、降りて路地に入っていく。(脚本書いてるときはドゥカティのバイクを使うつもりだったけど実際にタイアップできたのはMVアグスタとかそういう大人の事情でしょうか。)

屋内。アパート。直後。

ウェインがドアを数えながら廊下を行くのを、食い詰めた住人たちが見ている。ウェインは1502号室を見つける

屋外。パークサイド通り。しばらく後。

ぎっしりと整列した警官が通りを埋めている。その中央に、遺族たちと儀仗兵。市長が演壇に立っている。ゴードンが後ろにいる。デントはレイチェルと一緒に着席している。

市長
我々は彼らの尊い犠牲を認識するとともに、我々の安全の陰には常に、我々を守る人々がいることを忘れてはなりません。

屋内。アパート。直後。

ウェインが入っていくと、縛られて猿轡と目隠しをされた八人の男たちが下着姿でそこにいる!窓辺の三脚に、狙撃用のスコープが設置されている。ウェインは手近な男に近づき、彼の口から急いでテープをはがす。


(喘ぎながら)
取られたやつらに、銃と制服を

屋外。パークサイド通り。直後。

ゴードンが群衆に目を光らせている。市長は演説を終える。儀仗兵が進み出て、銃を構え


屋外。パークサイド通りを見下ろす屋上。直後。

警察の狙撃手が、アパートの窓を一つ一つチェックしている

屋内。アパート。直後。

ウェインが窓に突進し、スコープをのぞくと:

屋外。ステート通り。直後。

儀仗兵たちが、銃を一斉に市長に向ける!中の一人がニヤリと笑う。傷を隠す肌色のメイク。ジョーカーだ!

ゴードンが跳び出す!儀仗兵たちが発砲する!ゴードンは銃弾を背に受けながら、市長を庇って地面に押し倒す。

屋外。パークサイド通りを見下ろす屋上。直後。

警察の狙撃手が窓辺のウェインを発見して、狙撃!

屋内。アパート。直後。

ガガガガガッ!いくつもの銃弾が窓辺にはじける。ウェインは咄嗟に身を躱す!

屋外。パークサイド通り。直後。

わきおこる阿鼻叫喚。儀仗兵の一人が脚を撃たれて倒れる。残りの儀仗兵は混乱に乗じて消える。

演壇の上で、スティーブンスがうつぶせに倒れたゴードンを仰向かせる。ゴードンは動かない。

屋外。パークサイドの裏通り。しばらく後。
大混乱が続く。デントは横丁に停まった救急車に近づく。二人の警官が飛び降りて上官のもとへ走っていく。デントは救急車の後部に乗り込む。

車内。救急車。直後。

先ほど捕まったジョーカーの手下が座っている。手錠をかけられている。救急隊員が彼の脚に包帯を巻く。大声で命令を伝えながら警官たちが走りすぎる。

デント
ジョーカーについて何か知っているか。

ジョーカーの手下はデントを見つめる。冷笑を浮かべる。デントはうなだれる。極度に苛立っている。ジョーカーの手下を睨み返して、何かに気づく。近付いてみると、手下が着ている制服の名札が

レイチェル・ドーズ巡査!

デントは荒い息を吐きながら周囲を見回す。救急隊員が車を飛び降りて、倒れた警官を助けにいく。デントはささったままのイグニッション・キーを盗み見る。それから運転席に飛び込んで

屋外。ゴードンの家。夕暮れ。

バーバラ・ゴードンが玄関に立っている。おびえた表情。スティーブンスと制服警官が一人、彼女の前に立っている。

スティーブンス
済まない、バーバラ。

ジェームズ・ゴードンが母親の脇をすり抜けてスティーブンを見る。バーバラはジェームズを押し戻そうとする。

バーバラ
ジミー、妹と遊んでらっしゃい

ジェームズはドア向こうに消えるが、そこで動かずに聞き耳を立てている。

スティーブンス
済まない。

バーバラはスティーブンスを睨む。それから彼の背後の暗がりを睨む。

バーバラ
あなた、そこに居るの?顔ぐらい出しなさい!

ジェームズはそこに何かが居るのに気づく。バットマンだ。闇のなか、怪鳥のようにうずくまっている。

バーバラ(続けて)
全部あなたのせいよ!みんなおかしくなっちゃったんだわ!あなたよ!あなたのせいでこんな

バーバラは崩れ落ちて、スティーブンの腕に支えられる。バットマンは頭を垂れる。

屋外。屋上。重大犯罪課。夜。

重大犯罪課の刑事たちが、点灯したバット・シグナルのまわりに集まっている。

スティーブンス
消せ。奴は来ない。

スティーブンス
奴は俺たちと話したくないんだ。俺たちだけじゃない、多分誰とも話す気がない

屋内。ナイトクラブ。夜。

ストロボライト。ドスドスと喧しい音楽。マローニが愛人と一緒にブースに座っている。ボディーガードたちがテーブルに集まっている。

愛人
(音楽に負けじと大声で)
もっと静かな場所に行かない?話が全然聞こえないわ!

マローニ
お前の話など聞きたくない。

愛人
(聞こえてない)
なに?

ローニのボディーガードの一人が倒れる。マローニがそちらを見る。ストロボライトの中で、バットマンがボディーガードたちを相手に荒れ狂っている。人々は 怯えて逃げる。マローニは席から立ち上がりかけるが、バットマンが豹のように跳躍してマローニの目の前のテーブルに着地する。

屋内。重大犯罪課。夜。

レイチェルが大混乱の目撃者拘留エリアを行く。民間人や警官が事情聴取を受けている。レイチェルの電話が鳴る。

レイチェル
ハーヴィー、どこに居るの!?

一方何やらよく分からない建物の中にいるデント。

デント
君はどこだ?

レイチェル
あなたが居るはずの場所よ。重大犯罪課が、何とかこの混乱をさばこうとしてるわ。

デント
レイチェル、聞いてくれ。そこは危険だ。

レイチェル
ここはゴードンの部署よ、ハーヴィー

デント
ゴードンは死んだよ、レイチェル。

レイチェル
彼が選んだ部下たちよ。

デント
だから死んだのさ。ジョーカーが今度は君を指名した。

レイチェルは拘留エリア全体を見回す。刑事たちの表情を探る。

デント(続けて)
レイチェル、君が奴等に殺されるのを黙ってみている訳には行かない。私は君を愛してるんだ。

デント
この街で、誰か一人でも信用できる人間が居るかい?

レイチェル
ブルース。ブルースなら信じられるわ。

デント
レイチェル、彼が君の友達なのは知っている。しかし

レイチェル
私を信じて、ハーヴィー。ブルースのペントハウスは、この街で一番安全な場所よ。

デント
分かった。まっすぐそこへ行け。誰にも言わずに。私も後で行く。

カメラが引くと、デントのいる場所が分かる。

屋内。地下室。使用禁止になった建物。直後。

デント
君を愛している。

デントは電話を切る。デントの前で、誰かがテープで椅子に縛り付けられている。ジョーカーの手下だ。デントが目隠しをむしり取る

屋外。非常階段。夜。

マローニが目を開ける。バットマンは彼の襟首を掴んでいる。

バットマン
ジョーカーを出せ。

マローニ
(下を見て)
お互いプロだから言うが、誰かを脅したいんなら、場所を選べ。この程度の高さから落ちても俺は死なんよ。

バットマン
だからここがいいのさ。

バットマンは手を放す。マローニは落ちる。そして悲鳴を上げる。

屋外。歩道。夜。

マローニが歩道に叩きつけられる。必死で自分の脚を掴む。ひどい骨折だ。バットマンが跳んで、マローニの上に着地し、今度はグイと担ぎ上げる。マローニは苦痛で絶叫する。

バットマン
ジョーカーはどこだ。

マローニ
知らん。奴が俺たちを見つけたんだ。

バットマン
奴にだって仲間が居るだろう。

マローニ
仲間?ひょっとしてお前、奴に会ったことがないのか?

バットマン
この世に誰か一人ぐらいは、奴の居場所を知っている人間が居るはずだ。

マローニはバットマンを見上げる。冷笑。

マローニ
知っ ていても、お前に言う奴は居ないよ。お前の行動は読める。お前にはルールがあるからなジョーカーには、奴にはルールがない。お前のために奴を裏切る奴は いない。あいつに会いたければ、方法は一つしかない。お前も知っているはずだ。マスクをとれば、あいつの方でやってくるさ。

バットマンはマローニをドサリと落とす。

マローニ(続けて)
それとも決心がつくまであと何人か殺されるのを見ているつもりか?

屋内。地下室。立入禁止のビル。夜。

デントはジョーカーの手下に銃を見せる。さらに弾丸を。銃に弾を込める。それを手下の顔に突きつける!

デント
ゲームをするかい?

デントは本物の悪意を込めて、銃を手下の顔に押し付ける。離したと思うと発砲する!手下はビクリと身をすくませる。デントは銃口を手下のこめかみに突きつける。

ジョーカーの手下
(動揺して)
まさか、お前

そしてデントはポケットから、例の幸運のコインを取り出す。

デント
やらないさ、私はね。だからこいつに判断させる。
(コインを見せ)
表なら君は生きのびる。裏ならお気の毒さまだ。さて、ジョーカーのことを話す気になったかね。

手下は怯えているが、何も言わない。デントはコインをはじく。銃を持った手の甲に叩きつける。(腕を水平にして手下を狙っている。)デントは彼にコインを見せる。表だ。手下は大きく息を吐き出す。震えている。

デント(続けて)
もう一度やるかい?

ジョーカーの手下
(すすり泣きながら)
本当に何も知らないんだ!

デント
ふうん、じゃあもういっぺん運試しをしてみるかい?

デントはもう一度コインを投げる。今度はなぜか落ちてこない!デントは上を見る。バットマンが立っている。

バットマン
一人の人間の命を、偶然に託すのか?

デント
そういうわけじゃない。

バットマン
彼の名前はトーマス・シフだ。妄想型統合失調症で、アーカム精神病院に通院歴がある。ジョーカーに引きつけられるタイプだ。

バットマンはシフから離れる。

バットマン(続けて)
彼から何を聞き出すつもりだ?

デントは苛立ちの余り震えている。

デント
ジョーカーはゴードンを殺したそして、そしてローブを。今度はレイチェルを殺すつもりだ。

バットマン
はかけがえのない希望の星なんだ。少なくとも私は絶対に君の代わりにはなれない。組織犯罪に対して君は立ち上がった。ゴッサムでは何十年も見かけないよう な、まっとうな希望の光だ。もし誰かにこんなところを見られたら、何もかも台無しになる。君が駆除した悪党どもは、全員釈放されるだろう。ジム・ゴードン の死は無駄になる。

バットマンはデントに幸運のコインを返す。

バットマン(続けて)
記者会見の手配をしてくれ。明日の朝だ。

デント
なぜ?

バットマン
これ以上誰も私のために死なせはしない。ゴッサムは君の手に任せる。

デント
駄目だ!屈服するんじゃない!

しかしバットマンはすでに消えている。

屋内。寝室。ウェインのペントハウス。夜。

レイチェルが窓越しにゴッサムを見ている。ウェインが入ってくる。

レイチェル
ハーヴィーから電話があったわ。バットマンが自首するって。

ウェイン
それしかないんだ。

ウェイン(続けて)
これで君と一緒にいられる。

レイチェル
ブルース、私と一緒じゃなくても普通の人生は送れるわよ。

ウェインは彼女の腕をとる。

ウェイン
まさか本気で言ってるわけじゃないよね?

レイチェル
本気よ。

二人はキスする。そして離れる。レイチェルは悲しげにウェインの目を見つめる。

レイチェル(続けて)
あなたが自首したら、どうせ引き離されることになる。

ウェインは頷く。立ち去る。レイチェルはその背中を見ている。

屋内。バット地下壕。夜明け。

アルフレッドが焼却炉に書類をバサバサと放り込む。青写真、設計図、ファイル。ふと手を停めて一冊の本を見る。

アルフレッド
日誌まで燃やすのですか?

ウェイン
ルシアスやレイチェルに累を及ぼすような記録は全部燃やす。

アルフレッドは日誌を火に放り込む。そしてウェインを見つめる。

ウェイン(続けて)
人が何人も死んでるんだ、アルフレッド。こうする以外何ができる?

アルフレッドは凄まじい眼光でウェインの目を見据える。

アルフレッド
耐えるのです、ウェイン様。正面から受け止めるのですよ。人々は旦那様を憎むでしょうが、それこそがバットマンの強みなのです。彼は世間に疎まれてもいいのですよ。ほかの誰にもできない選択ができるのです。正しい選択が。

ウェインは首を振る。

ウェイン
今日私はバットマンにも不可能があるのを知ったよ。彼はこの状況に耐えられないんだ。

ウェイン
(痛々しい笑顔を浮かべ)
「だから申し上げたではないですか」と言う日が来たのさ。

アルフレッド
今日に限って、私はそれを言いたくありません。
()
言ってしまったも同然かもしれませんが。

ウェインはバットスーツの入ったケースを床に沈める。アルフレッドは焼却炉の扉を閉める。二人はエレベーターに向かって歩き出す。

アルフレッド(続けて)
私も捕まるでしょう。共犯者ですから。

ウェイン
共犯者だって?いっそのこと、すべては君の考えだったって言ってやろうかな。

二人は電源を落とし、バット地下壕を闇に沈める。