屋外。ゴードンの家。夜。

ゴードンがベルを鳴らす。バーバラがドアを開ける。喪服を着ている。

ゴードン
こうするしかなかったんだ。お前たちを巻き込むわけには

バーバラはゴードンに平手打ち!ゴードンはバーバラを抱き締める。啜り泣くバーバラ。

屋内。勾留エリア。重大犯罪課。ゴッサム中央署。夜。

ジョーカーの手下たちが取調べを受けている。容赦のない照明の下で、道化のメイクは少々間が抜けて見える。マーフィー刑事がスティーブンスの方を向く。

刑事
揃いも揃って見苦しい面だな。

手下の一人が近づいてくる。腹を押さえている。

太った手下
腹が痛ぇ。

刑事
お前らは警官を殺したんだ。首から下の感覚があるだけでも有難く思え。

一人別の檻に入れられて、ジョーカーはニヤニヤ笑いながらこの遣り取りを見ている。

屋内。子供部屋。ゴードンの家。夜。

ゴードンが息子のベッドのそばにしゃがんでいる。手を伸ばしてジェームズ・ジュニアの頬に触れる。ジェームズは目を開ける。まだ夢を見ているような表情で、父親を見つめる。

ジェームズ
(ささやくように)
バットマンが助けてくれたの?

ゴードンは息子を見つめる。ちょっと誇らしげな顔になる。

ゴードン
実は、今日はパパがバットマンを助けたんだ。

ゴードンの電話が鳴る。

屋内。重大犯罪課。ゴッサム中央署。夜。

ゴードンが刑事たちの間をグイグイかき分けて取調べ監視室に入っていく。ガラス越しに見えるジョーカーは、大きなモニタにも映っている。椅子に座って落ち着き払っているジョーカー。

ゴードン
何か吐いたか?

ラミレスは首を振る。ゴードンはドアを開けて出て行く。

屋内。取調室。重大犯罪課。ゴッサム中央署。夜。

ジョーカーが暗がりに座っている。ゴードンが入ってくる。座る。

ジョーカー
こんばんは。本部長殿。

ゴードン
ハーヴィー・デントが家に帰ってない。

ジョーカー
そりゃそうだろう。

ゴードン
奴に何をした?

ジョーカー
(笑う)
私が?私はここにいたさ。ハーヴィーに誰を付けたんだ?あんたの部下か?もちろん、あんたの部下はそのまんまマローニの部下でもあったりするけどな
(目をそらして)
嫌な気分かい、本部長殿、自分がいかに孤独であるか知るのは?

ゴードンは思わず壁の監視カメラに目をやる。

ジョーカー(続けて)
ハーヴィーが消えたのは君の責任かもしれないねえ。

ゴードン
奴はどこだ?

ジョーカー
いま何時だい?

ゴードン
そんなことは関係ないだろう。

ジョーカー
おおありさ。時間次第なんだ。デントが一つの場所にいるか
(にやりと笑って)
それとも幾つかの場所に飛び散って存在するか

ゴードンは立ち上がる。ジョーカーに迫る。手錠を外す。

ゴードン
ゲームをしようってんなら、私はちょっとコーヒーを飲んでくるよ。

ジョーカー
「良い警官、悪い警官」って奴をやるのかい?

ゴードン
ちょっと違うかな。

ゴードンは出て行く。頭上のライトがつく。バットマンがジョーカーのすぐ後ろにいる!ジョーカーは強烈な白い照明に瞬きをする。

バーン!バットマンがジョーカーの顔をテーブルに叩き付ける!息をつこうと起き上がったところを、さらに二回!頭を狙っている。バットマンはジョーカーの前に回っている。ジョーカーはうっとりと彼を見つめる。血が出ている。

ジョーカー
最初から頭を狙っちゃ駄目だ。ボーッとするからね。次に何をされても感じない

グキッ!バットマンの拳が、テーブルの上のジョーカーの指に振り下ろされる。

ジョーカー(即座に)
(平然と)
ほらね?

バットマン
要望に応えて、来てやったぞ。

ジョーカー
あんたがどう反応するか知りたかったんだよ。あんたは期待を裏切らなかった
(声を立てて笑う)
五人も見殺しにしたんだからね。次はデントを身代わりに立てた。たとえ相手が私みたいな奴でも、あまりに冷たいねえ。

バットマン
デントはどこだ?

ジョーカー
ギャング連中は馬鹿だから、あんたがいなくなれば元通り商売ができると思ってる。だが私は真実を知ってる。昔に戻るなんてことはできないんだよ。あんたは世の中を変えちまったんだ、今後永久に。

バットマン
じゃあどうして私を殺そうとする?

ジョーカーは大声で笑い出す。やがて、笑いすぎて啜り泣くような声になる。

ジョーカー
あんたを殺す?あんたを殺そうなんて思ってないさ。あんたがいなくなったら、私に何ができる?またギャングがらみの商売から金を巻き上げるとか?いやいや、あんたが
(指差して)
あんたがいるからこそ、私は、私になれるんだ。

バットマン
お前は金のために人を殺す人間の屑だろう。

ジョーカー
おやおや、世間の連中みたいな口をきくじゃないか-----でも、あんたは世間の一部じゃないんだよ、たとえ仲間に入りたくてもね。奴らにとっては、あんたは私と同じ化け物にすぎないとりあえず必要だから飼われてるだけだ。

まるで哀れむような目でジョーカーはバットマンを見る。

ジョーカー
そして用が済み次第、奴らは疫病神みたいにあんたを捨てる。

ジョーカーはバットマンの目を覗き込む。探るように。

ジョーカー(続けて)
奴らの道徳、奴らのルールみんな悪い冗談さ。ちょっとでも面倒になれば、平気で放り出す。余裕のあるときだけの飾りみたいなもんだね。いまに分かる私が見せてやるいざとなりゃあ、良識ある市民の皆さんは、すぐに共食いを始めるんだ。
(満面の笑顔で)
ほら、私は別に化け物じゃない。一歩先が見えてるだけさ。

バットマンはジョーカーを掴み、立ち上がらせる。

屋内。監視ルーム。重大犯罪課。ゴッサム中央署。夜。

刑事の一人がバットマンを止めようと、ドアの方へ行きかける。ゴードンが制止する。

ゴードン
まかせておけ。

屋内。取調室。重大犯罪課。ゴッサム中央署。夜。
バットマンがジョーカーの首を掴んで吊り上げる。

バットマン
デントはどこだ?

ジョーカー
あんたには色々とルールがある。だから狂わずにすむと思っている。

バットマン
私のルールは一つだけだ。

ジョーカー
じゃあそれを破る羽目になるな。真実を知るために。

バットマン
真実?

ジョーカー
(にやりと笑う)
この世界で狂わずに生きる唯一の方法は、ルールを持たないことさ。今夜あんたは、その一つきりのルールを破ることになる。

バットマンはジョーカーの方へ身を乗り出す。

バットマン
私もそれは考えている。

ジョーカー
もう数分しかない。だから、私の用意したゲームをするしかないね。助けたければ
(嬉しそうに)
助けられるのは二人のうち、一人だけなんだが。

バットマン
二人?

ジョーカー
あんたの正体がデントだと、さすがの私も信じかけたよ。あんたが彼女の後を追って窓から飛び出したときに

バットマンは吊り上げていたジョーカーをあっさり放して、床にボルトで固定された椅子をむしり取る。

屋内。監視ルーム。重大犯罪課。ゴッサム中央署。夜。

ゴードンがバットマンを止めようと動き出す。

屋内。監視ルーム。重大犯罪課。直後。

バットマンが、誰も止めに入れないように、壊した椅子をドアノブの下に突っ込む。ジョーカーを掴んで、マジックミラーの隔壁に叩き付ける。ガラスにクモの巣のようなひびが入る。

屋内。取調室。重大犯罪課。ゴッサム中央署。夜。

ジョーカーが、鼻と口から血を流しながら、バットマンを笑う。

ジョーカー
いいねえ、いい反応だねえハーヴィーは君と彼女の関係を知ってるのかなぁ?

ジョーカーは壁に叩き付けられずるずると床に落ちる。
バットマンが彼の前に仁王立ちになる。取り憑かれた表情。

バットマン
二人はどこだ!

むんずとジョーカーを掴み、引き寄せる。

ジョーカー
選ぶってのは難しいねえ/殺すことは選ぶことだねえ
Killing is making a choice... 倒置法を用いたダブルミーニング

ジョーカーの顔に横殴りのパンチ。強烈。

バットマン
二人をどこに隠した!

バットマンの怒りがジョーカーの飢えを満たす。無上の快楽。

ジョーカー
二人のうち、一人だけを選ぶんだよ。友人の地区検事か、それとも頬を染めた彼の花嫁か

バットマンはもう一度ジョーカーを殴る!ジョーカーは哄笑する!

ジョーカー(続けて)
あんたには、なーんにもない。私を脅すネタが何もない。そんだけ強くても、なァんにもできない
(折れた歯をペッと吐き出し)
だけど大丈夫、私が彼らの場所を教えてあげよう。二人ともだ。これが大事なんだ。あんたが選ばなきゃならない。

バットマンはジョーカーを睨みつける。

ジョーカー(続けて)
彼は52番街250番地。彼女はシセーロのX通り。

バットマンはジョーカーをポイと捨てる。

屋内。監視ルーム。重大犯罪課。ゴッサム中央署。夜。

バットマンがゴードンの脇を猛然と通り過ぎる。

ゴードン
どっちを?

バットマン
デントは最初から覚悟してる。

ゴードンは振り返る。ジョーカーは血にまみれて、嬉しそうに笑っている。