「青い衝動」 



初回放映 1995年10月20日
ゲスト・スター:マシュー・スウィート、キャサリン・バーク

(アヴァンタイトル)
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ゾラック:(スペースゴーストのデスクに座って、モニタに見入りながら。)おっ、あの娘をもっと見せろ!最高だぜ!痙攣する目とか、たくましい前脚とか!
モルター:(溜息)七年ごとに必ず来るな。宇宙カマキリの発情期か…
ゾ:待て!あの娘はもっといいぞ!鎌がいいねえ!
モ:なあ、ゾラック。そろそろ本番が始まるぞ。モニタを切り替えないと…
ゾ:いや、まだだ!理想のタイプを見つけたばっかりなんだよ。
モ:どの娘だ?
ゾ:あの娘だ!(モニタ、クローズアップしてマーロ・トーマスそっくりのカマキリを捉える)
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(あの娘だ!という叫びに合わせてオープニング音楽&タイトル)

スペースゴースト:(いつものように透明状態から姿を現しつつ)一般市民の諸君、ご機嫌よう!…おおっと!(途中で慌てて透明に戻る。ジッパーを上げる音。)ふむ、これでよし。(姿を現す)
モ:まったく、十年一日の番組だな…かわりに溶岩チャンネルでも見よう。(調整室のモニタを、スタジオから溶岩の映像に切り替える。)おおおおおおぅ、たまらんのう!(註:モルターは溶岩族の宇宙人)
ス:(透明化してデスクまでテレポート)ご機嫌よう!私がスペースゴーストだ。私のショーにようこそ!今夜のゲストは…
ゾ:はい、番組終了!さようなら、さようならみなさん…(ゾラック率いるスタジオのバンドがエンディングテーマを開始)
モ:(溶岩ショーを見ながら、アダルトに)むむーん、寝てみたい…おわ?もうエンディングテーマか?これはしたり!(調整卓のレバーを押し、クレジットを流し始める)
ス:わー、ちょっと待て!どうなってるんだ?クレジットを停めろ!モルター!
モ:(クレジットを停める)すまん、スペースゴースト。もう終わりかと思ったんだ。
ゾ:終わりさ。
ス:バカな!始めたばっかりだぞ。
ゾ:いや、ちゃんと最後までやったって。
ス:そうだっけ?
ゾ:そうさ!
ス:ふむ…そうか…ゲストは誰だった?
ゾ:ここに出てる。(「今日のテレビ」誌を開いて読み上げる)「今夜、大宇宙の司会者はテレビ女優キャサリン・バークとシンガーソングライター、マシュー・スウィートをインタビューした。」
ス:(心の中で)(ふーむ、思い出せんぞ。私は番組をやったのかやってないのか?)キャサリン・バークは何て言ってた?
ゾ:すごく面白い逸話が出たぞ…(考える)…ボーリング大会のトロフィーについて。
ス:そうだったのか、モルター?
モ:あー、たぶん。
ス:じゃあマシュー・スウィートは?彼は何て言った?
ゾ:(言葉に詰まって)…なんにも。
ス:なんにも?まさか。
ゾ:いやその、そうそう!そーいやなんか言ってたわ。
ス: (心の中で。バックにチカチカという音)(うーむむむ、スーパーヒーローの超知覚がチカチカと瞬くぞ。やつらは何を言おうとしてるんだ?そろそろ口臭予防 薬を替えたほうが良いのか?さけるチーズを買ったほうが良いのか?そろそろ私もダービー服を着るべき年齢なのか?)読めた!ゾラックは嘘をついてるな!茶 番はそこまでだ!何をたくらんでる?
ゾ:うがああああ!二十分前に発情期が始まったんだ!俺は行くぞ!
ス:バターとチーズを買いにか?
ゾ:感じるぜ…突き上げる衝動を!
ス:まったくミュージシャンって奴は。いいか、我々は番組をやらねばならん。最後まで我慢したまえ。
ゾ:でも…
ス:抑えるんだ、ゾラック。なんとしてでも。あと十五分我慢すれば(「スペースゴースト」は十五分番組)、あとは君の邪悪な種をばらまき放題だ。とりあえず今、私はキャサリン・バックと話してボーリング大会のトロフィーの話を聞かねばならん。
ゾ:(意味不明の言葉を口走り始める)

(スタジオのメインモニタにキャサリン登場)

ス:ご機嫌よう、キャサリン。私の番組にようこそ。
キャサリン:ありがとう、スペースゴースト。
ス:キャサリン、ボーリング大会のトロフィーを持ってるかい?
キャ:うん、持ってる。
ス:(笑う)
モ:(笑う)
ス:いやはや、面白い話をありがとう。
モ:(笑う)
ゾ:全身がまだら模様になりそうだぜ。
ス:御存知の通り、君はテレビドラマ「デュークス・オブ・ハザード」のデイジー役でデビューした。みんな気になっていると思うんだが、悪役のボス・ホグを二語で表現すると?
キャ:素晴らしい猿の…ソースって感じ?
ス:いや、そこを二語でなんとか。
キャ:とても繊細で素敵。
ス:言えたじゃないか!収録中はどんな感じだったかい?ちゃんとコースで食事が出たのか、それとも一品だけ…
キャ:あの番組は私にアントレを…
ス:でもデザートは無かったの?ふーむ、そりゃ買い叩かれたねえ。ところで新しい番組で新天地に行くことになったけれども、アフリカはアメリカと比べてどんな感じだい?
キャ: うーん、南アフリカには、ジークフリート・アンド・ロイ(ラスベガスを本拠に活躍する、有名手品師コンビ。染之介・染太郎に歌手の「狩人」を掛け合わせた ような淫靡さがあって、なんかエグい。こないだ片方が飼い虎に噛まれたと思ったら、いきなり芸能誌でゲイネタを特集されていた。たしかにそういう雰囲気が 充満している二人だが、虎に噛まれて死にかけている最中に、容体そっちのけでこういう特集を組まれるとは気の毒な話である。知名度の割に愛されていない芸 人の典型か。スペースゴーストはベトナム以前のオヤジマインドの持ち主だから、当然こういう淫靡な男コンビは嫌いであろう。)がいないわね。
ス: なんだって!それは知らなかった。モルター!私の投資アドバイザーを電話に出してくれ。すぐ南アフリカに投資するんだ!(小声で)あー、これらの見解は私 個人のもので、必ずしも放送局やオーナーの意見ではありません。(普通の声に戻って)キャサリン、間をつないでくれ!黒サイの話でもして!
キャ:まず第一に、人間に捕まっている状況では黒サイは繁殖しないの。
ゾ:俺もだ!(ゾラックは宿敵スペースゴーストに拉致されて番組を手伝わされているという設定。)
ス:(ゾラックに)音楽に集中しろ!
ゾ:できるか!発情期なんだ!
ス:だからってそんな…いや、待てよ…ゾラック!ふっふっふ、ひょっとして初めてなのかい?
ゾ:ばか言ってんじゃねえ!やったことぐらいあるさ…腐るほどな!
モ:ちょっと待て、それは有り得ない!
ゾ:どうして?
モ:あんたの頭がまだ胴体につながってるからだ。
キャ:(マイクの前で首を斬るように手を動かしながら)スパーーーッ!
モ:(へたくそなカマキリの頭の絵を調整室のモニタに映して)いいかね、宇宙カマキリの繁殖活動においては、一般に雌が雄の頭部と脳を食べるのだよ。(モニタ上の頭部が少しずつ齧り取られ、小さな脳だけが残る)
ゾ:そんなバカな!
モ:あんた、知らなかったのか?
ゾ:うちの母ちゃんはそんなこと言わなかったぞ!
キャ:(のけぞりつつ笑う)ほっほっほっほっ…
ゾ:笑い事じゃねぇ!
キャ:(まったく同じ動作で笑う)ほっほっほっほっ…
ス:キャサリン、笑うのはやめてやってくれたまえ。
キャ:(まったく同じ動作で白痴のように笑う)ほっほっほっほっ…
ス:私はまじめに言ってるんだ!
キャ:(まったく同じ動作でグロテスクに笑う、というかコピペ)ほっほっほっほっ…
ス: やめろと言ったはずだぞ。(モニタに腕のビームガンを叩き込んでキャサリンを吹き飛ばす)オーケー、ゾラック、彼女は始末した。私の考えを言おうか?もし 君がまぐわいに行きたいなら、私は止めるべきではない。これはあらゆる宇宙生命体の侵すべからざる権利なのだ。(早口で、胸に手をやりながら)愛を知り、 愛され、愛を分かち合い、愛を知り…あ、これはもう言ったか。 (なぜか「愛」と一言言うごとに胸に仕込まれた通信機の目が光り、ピーピーと鳴る)
ゾ:…俺、だんだん愛されたくなくなってきたんだけど。
ス:なんだって?君は愛に伴う責任を恐れているのかね?
ゾ:おい、見ろ、マシュー・スウィートが来たぞ!(モニタにマシューが現れる)
マシュー:…ティーンのロックの帝王、人形の谷より見参!
ス:あー、マシュー、えーと、君の…ズボンは…どうしてずり落ちないんだ?
マ:とにかく心を精一杯集中させるんだ…こいつは僕の脳に組み込まれてる。なんていうか、もうベルトも要らないってカンジ?
ス:すばらしい!では、なぞなぞだ。バイオ・ディップと一緒に食べるものは?(ディップ:ポテチやトウモロコシのスナック、生野菜などに付けて食べるためのドレッシングのようなもの。機能的には串カツ屋のソースに一番近いか?)
マ:(間髪置かず、流れるように)バイオ・チップ。
ス:スルドいな!きっと君はパワーもあるんだろう?
ゾ:(怪音を発し始める。以後会話の背景で怪音が続く。)
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ス:知っての通り、私の腕のレーザー銃は全大西洋を五秒で沸騰させられるんだ。君は何かを指差しただけで熱くすることはできるかね?
マ:じゃがいもを焼くとか卵を茹でる程度ならなんとかなるかもね。(笑う)
ス:やはりな。ぜひ鍛練を続けたまえ。君にはスーパーヒーローの素質がある!
ゾ:(まだ怪音を発しているが、急に沈黙して)もう我慢できねえ!俺の星に帰る!俺は愛が欲しいんだああああ!
モ:でも悲惨な結末が…
ゾ:○△〒☆!!!!
モ:わかったよ、行けばいい…
ス:マシュー、君はどう思う?ゾラックはまぐわいのために帰るべきだろうか?
マ:あー、存分に、みっちりやんなさい。
ス:その後確実に死ぬとしても?
マ:ドンといけ。
ゾ:決まりだ!俺は行く、あとファントム・クルーザー(スペース・ゴースト専用の自家用車サイズの宇宙艇。曲線を多用した、典型的な昔SFデザイン。)を借りてくぜ!
ス:よろしい、だが頭が無くなったときはタクシーで帰ってくるんだぞ。あ、それから、えーと、グローブボックスにはジーノ・ヴァネリのテープが入ってる。(なぜか赤面する)
ゾ:(びよーん!と跳躍してスタジオを抜け、一昔前のレーシングカーのような爆音と共にファントムクルーザーで男根のごとくウィリーしながら宇宙に飛び去る。)イェーーフーーーーーーー!

(送信中断~~~コマーシャル休憩~~~送信再開)

ス:(盛大にゲップをしたあとカメラが入っているのに気づいて赤面する。)へへへ、私としたことが!あー諸君、大変失礼した。いつもならゾラックが音楽を入れて誤魔化してくれるんだが…
モ:休憩中にポーク・チョップのサンドウィッチなんぞつまみ食いしてるほうが悪い。
ス:(口の中が一杯のまま)何の話かな?
モ:下品なんだよ全く。
ス:こんなことはみんなやってるさ!マシュー・スウィート、君は世間をよく知ってるだろう。でっかい下品なサンドウィッチをつまみ食いしたことはあるかね?
マ:ああ、あれは失敗だったね。そのせいで番組を何本か降ろされたよ。言うまでもないけど、その後二度とやってない。
ス:ぐぐ、役に立たんゲストめ。(心の中で:何の話をしてたんだっけな?)そうそう、今日はゾラックが抜けたから音楽が無いんだ!そういうことなら、私が音楽を担当しよう!
マ:え、ほんと?
ス:本当さ!スティーブ・アレンはピアノを弾き、アーサー・ゴドフリーはウクレレを弾き(二人とも伝説的なトークショー司会者)、そして私、スペース・ゴーストは……ブルースハープを吹くのだ!誰かが悲しい話をしてくれないと駄目なんだけどね。さあ悲しい話をするんだ!
マ:あー、その…えーと…僕は酒を飲んで…
ス:完璧だ、続けたまえ。(切れ切れの唄のようなものを吹き始める。「蛍の光」か?)
マ:ステージ中って凄く咽喉が渇くんで…ビールの一本や二本じゃ酔わないからさ…
ス:ふん、ふん…(何だか分からないものを吹き続ける)
マ:…で、ビールが無くなったときに、曲の合間に急いで物陰に引っ込んで瓶をつかんで帰ってきたら空き瓶だったりするわけ、それも何度も…これが頭に来たんで…
ス:もっと、もっと悲しくしてくれ…(アバンギャルドかつ音痴なものを吹き続ける)
マ:…そんなわけで飲み終えた瓶はアンプの背面にぶつけて叩き壊すことにしたのさ。ちょっとやそっとじゃビール瓶って壊れないし。
ス:証明したまえ!
マ:えーと…
ス:君の良くない側面について話し続けるのだ!
マ:ほら、ビール瓶って結構頑丈でしょ…
ス:(ブルース歌手のような声で)びぃぃいるびんはぅあぅぅ、けぇっこうぐぁんじぃおぅおぅ…
マ:で、とにかく、いつもアンプの背面を使って壊してたんだけど、ある晩それをやったら、なんかまずい割り方をしたらしくて、最後の曲をやってるときに手がベタベタするんでふと下を見たら、血まみれでさ…
(この番組には、ゲストがいわゆる「トークショー向き」のぬるい個人的逸話や現場の裏話を始めたときには決してまともに話させないという不文律があるようだ。キャサリン・バークのトロフィーの話もあんな扱いだし。)
ス:(いきなり最後だけ「峠の我が家」になって吹き終える)この番組も巡業に出たいねえ!ブルース渡世なんちゃってね!
マ:ダン・エイクロイドみたいだね。
ス:ダン・エイクロイドなら私も知ってるさ!マシュー、一つ頼んでいいかい?
マ:いいよ。
ス:ちょっとモルターに番組と関係ないことを訊きたいんで、そのあいだ息を止めててくれるかな。
マ:(深呼吸を一つしてから息を止める)
ス:モルター、ゾラックはどうなってる?
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モ:俺の探査によれば、奴は故郷の星に到達して、目標に接近中だ。(調整室のモニタにゾラックの姿が映る)
ゾ:(雌のカマキリに話しかける)君の外骨格は美しい…と言ったら君は俺を露骨な奴だと思うかい?
雌カマキリ1:(くすくすと笑う)
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ス:こいつあ驚いた!おいモルター、ゾラックってカマキリ族の中でも特に貧弱な坊やだったんだな!
モ:ああ、奴の恒常的な悪の生活習慣が表面化しているようだな。最終的に内面的本質は外面に…
ス:うむ、なるほど…(心の中で)あいつの言うことは難しくて全く分からんな…(モルターは博士号持ちという設定。よく調整室でも本を読んでいる。)
モ:ところでスペースゴースト。
ス:なんだ?
モ:マシューをほっといていいのか?もうすぐ死ぬぞ。(調整室のモニタに紫に変色したマシューの顔が映っている)
ス:これはしたり!(笑う)マシュー、もう息をしていいよ!(マシューは呼吸を再開する。顔色が普通に戻る。)マシュー、誰かに言われたからって何時もその通りにする必要はないんだよ。
マ:ほんと?
ス:これからは気をつけるんだ。
マ:うん、ちょっと気をつけるよ。
モ:スペースゴースト、これを見ろ。ゾラックの惑星で何か始まったぞ。(モニタにゾラックと、別の雌カマキリが映る。番組前にゾラックが見ていた、マーロ・トーマス風カマキリである。)
雌カマキリ2:(巨大な目を音を立てて瞬かせる。効果音はマリンバの二度の不協和音。)
ゾ:(それに応えるように瞼で低めの音を立てる。)
雌2:(瞬き×2)
ゾ:(瞬き×2)
雌2:(瞬き×3)
ゾ:(瞬き×4)
雌2:(瞬き×6)
ゾ:(瞬き×6)
雌2、ゾ:(二匹で目にも止まらぬ高速の瞬きをしばらく繰り返したあと、黙って見つめあう)
ス:どうやらゾラックは愛のある関係を築いたようだな!(ロマンティックな音楽がフェードイン)
(ゾラックと雌カマキリ2の頭上にそれぞれ吹き出しが出現する。)


ゾ:雨の中の散歩は好きかい?
雌2:好きよ!
ゾ:ポルトガル語から訳したエリザベス・バレット・ブラウニングのソネットは?
雌2:どうして分かったの?
ゾ:君のことは何でも分かるのさ。
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雌2:あなたみたいなカマキリ、初めて!
ゾ:死ぬまで君と一緒にいたいよ!
雌2:もちろんそうさせてあげるわ!

ス:故郷の星に帰るのは大正解だったようだな!愛が奴を変えたんだ。戻ってきたときにはすっかり別の虫になってるだろう!
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モ:…戻ってこないと思う。
ス:どうして?
モ:番組の最中に全部説明したじゃないか。覚えてないのか?
ス:もちろん覚えてるさ!(しばらく考えて)私はゴースト専用トイレに行かねばならん。(スタジオから飛び去ってビデオデッキのある小部屋に来る。番組のテープを巻き戻して、モルターの説明まで戻る)
モ:(ビデオ画面上で)…一般に、雌は雄の頭部と脳を食べる…(巻き戻す)雄の…(巻き戻す)頭を…
ス:(テープを止める)これはいかん!モルターの言う通りだ!(スタジオのデスクまで飛んで戻る)すまない、マシュー、こうしてはいられなくなった。緊急事態だ。そして君には分かってもらわねばならんが、私はトークショーのホストである以前に、スーパーヒーローなのだ!
マ:僕も一緒に透明になろうか?
ス: それはありがたいが、私が宇宙を救っている間、君はスリー・ドッグ・ナイトのアルバム「ハーモニー」の歌詞カードでも読んでいてくれ。この件は私一人で解 決する。さらばだ!(モニタ上のマシューにビームを打ち込んで吹き飛ばす)モルター、行くぞ!ゾラックを助け出すんだ!
モ:あのさ、俺達に何ができる?奴が食われるのは自然の摂理だ。しかも、ファントム・クルーザーはあいつが乗っていったから使えないだろう。
ス:しかし、このままではゾラックは確実に死んでしまうぞ!
モ:分かってるさ。ところで、ゾラックの楽屋、俺が貰っていいかな。
ス: こんなときにどうして楽屋のことなんか考えられるんだ?(BGM:悲しげな無伴奏合唱)このような大いなる悲しみの時に。おお、ゾラックよ、いかに我々が 君について無知であったことか!確かに君は純粋な悪そのものだった。だがいつしか私は、その悪の中に善を見るようになった。我が友よ、私は君の死を悼む、 君はいつも私を殺そうとしていたものだが。だが安心して眠りたまえ、君のことは決して忘れぬぞ!私は常に思いだすであろう、君が幸福なときに撒き散らし た、あの不快極まりない微毒性の瓦斯体を!君と共にした昼食も私は忘れない、君が十羽のチキンを生のまま食べ、コピー機からくすねたトナー液を飲むのを見 たあの日を!(なにかを飲んでいるゾラックの映像)君はあのトナーを大いに愛していた。そうだ!我々はパレードをするのだ!(BGMが、追憶された祭典の ように微かな行進曲に変わる)ゴースト・プラネットではこの日を祝日にしよう!華やかな風船や気球を浮かべて、我々は心地よく弾けるレモネードを飲み、ナ ポリ風のアイスクリームを食べるのだ。我々は君の生きた日々を祝福しよう!君の死を無駄にはしない!(例のごとく椅子から立ち上がってマッチョなポーズを 決める)

ゾ:(左から右にステージを横切って、いつもの楽器の前の席に座る)
ス:幽霊だ!
ゾ:バーカ。
モ:ゾラック?本当にあんたなのか?
ゾ:あたぼうよ!
ス:帰ってきたんだ!
モ:くそっ!ナポリ風のアイスクリームが食べたかったのに。
ス:君の惑星で何があったんだ?
ゾ:それについては話したくねえ。
モ:繁殖活動はしなかったんだな。まだ頭が胴体にくっついてるってことは!
ゾ:話したくねえって言ってんだろ。
ス:我々は仕事仲間じゃないか。打ち明けられないことは何もないはずだ。秘密は作らないでくれたまえ。
ゾ:だから何でもなかったんだよ!
モ:じゃああれはいったい何だったんだ?つまりだな、俺達はあんたが雌カマキリと消えるのを見てたんだ。
ゾ:あの雌カマキリは…実は雌じゃなかったんだ。
ス:雌じゃなかった?じゃああれはつまり…おい!君は雄のオカマを掘ってきたのか?
ゾ: やな想像すんじゃねえバカ。カールは雄カマキリ解放運動の一員で、発情がいちばん激しい時期に人助けをしてるんだよ。あいつは自分の巣まで俺を誘い込ん で、あとは二人でその気が無くなるまでバーベキューを食ってスポーツの話をして時間を潰したんだ。カールは…俺の命を救ってくれた。この借りは忘れねえ よ。
ス:何ていい話なんだ!映画化の権利は誰が持ってるんだ?
ゾ:テッド・ターナー。(ジェーン・フォンダの旦那でアメリカ最大の個人土 地所有者。CNN・WTBC・TNTなどのネットワークを設立したメディア王。この番組を制作している Cartoon Network のオーナーでもあるので、その意味ではスペースゴーストもゾラックも彼の掌の上で踊っていると言える。)
ス:なんだ、もう売っちゃったのか(がっくし)。…とにかく君が帰ってきたのは嬉しいよ!
ゾ:ああ、俺も帰ってこれて嬉しいぜ。なぜだと思う?復讐の計画を続けられるからさ。スペース・ゴースト、おまえの生涯のすべての瞬間を、この世の地獄にしてやるぜ!(邪悪なる笑い)
モ:(土管のような笑い)
ス:(おやじ笑い)
(ケンケンその他、昔の漫画映画のキャラクターが笑う場面が次々に挿入される。そしてエンドタイトル~いつもの制作会社のロゴの静止画)
ゾ:(ロゴ画面で、声だけ)笑いごっちゃねえ!
ス:(声だけ)(おやじ泣き笑い)