仮想温泉ぷろめてうす

 

新感染 ファイナル・エクスプレス



よくわかる脚本
By Alex W.
http://www.the-editing-room.com/train-to-busan.html

フェードイン:
屋外。韓国のハイウェイ

平凡なトラック運転手が、曰くありげな検問所を通過する。

係員
念のためですが、この先には隔離区域がありますよ。ウィルスがどうとかって話で。

トラック運転手
そりゃ物騒だねえ。ま、お客さんはみんなゾンビ映画だって分かって来てると思うけど、一応ネタ振りはしとかないとね。

検問所を通過した先で、運転手は鹿を轢く……しかしそれはゾンビ鹿だった!

ゾンビバンビ
ふーむ、ゾンビ映画もすっかりジャンルとして定着したけど、この映画は野生動物のゾンビ化という新たなアイディアを持ち込んで来たわけだ。さて、この設定は今後のストーリーにどう絡むのか!

(答え:ぜんぜん絡まない)

屋内。郊外の住宅
ファンドマネージャーのコン・ユが仕事から帰り、母親と娘のキム・スアンに挨拶する。

コン・ユ
ハッピーバースデー、私の可愛い…娘、だっけ?ごめんないつも忙しくて。ほら、3~18歳の全ての子供が最も好む商品をリサーチして選んだプレゼントだよ。

キム・スアン
Wii?子供の日にも、クリスマスにも、仏誕節にも、秋夕にも、ハングルの日にも(Googleって便利だなあ)同じものをくれたじゃない!だいたいWiiなんてもう誰も遊んでないし!

コン・ユ
他に欲しいものがあったのなら、会議でプレゼンしてくれなきゃ分からないよ。

キム・スアン
あと、どうして学芸会に来てくれなかったの?私、歌も最後まで歌えなかった。

コン・ユ
いいかい、映画に出てくる学芸会ってのは、仕事漬けの親がすっぽかすためだけにあるんだ。それ以外の意味なんてな・い・の。何か他のプレゼントを買って欲しいかい?

キム・スアン
もういいよ。釜山に行ってママに会いたい。一人でも行けるよ!もう自分の切符買っちゃった。

コン・ユ
(切符を見る)
どれどれ…「スノーピアサー」?そ、それだけはやめなさい!分かった分かった、一緒に行くよ。

屋内。駅

コン・ユとキム・スアンが列車に乗り込む。彼らの座席の周りには、「はいこれから乗り物パニック映画が始まりますよー」と言わんばかりの多彩なキャラクターが幕の内弁当のように配置されていて、ああこっちのジャンルはここ40年ぐらい変わってないなあとほのぼのした気持ちになる。

コン・ユ
いいかスアン、お前が決して危険な目に遭わないように父さんはしっかりとzzzzz
(一瞬で眠り込む)

キム・スアン
じゃ、私はちょっと車内を探検して、主要キャラクターのみんなに自己紹介してもらうね。

野球少年
やあ!僕は野球少女とラブラブだけど、自分の気持ちをうまく伝えられないんだ!

野球少女
でも私は伝えまくりよ!チームメートも公認の仲なのに、なんでそんなにシャイなの?

野球少年
ゾンビ映画の冒頭でチーム全員に「さあ運命を受け入れろ」なんて言われたら普通イヤな予感しかしないだろ!

老姉妹
あら観客の皆さんこんにちは。私たちは明らかに仲良しだけど「姉妹」とか言い出すのはずーーっと後だから、それまでどういう関係なのかゆっくり考えててね。

最低ビジネスマン
私はビジネスをする!そして私は最低だ!

マ・ドンソク
で、どう見ても一番かっこいいのがこの俺だ。このイカすブレザーを見ただけで分かるだろ。だいたいこのサイトじゃ端役は役者の名前も出ねえし。

チョン・ユミ
あ、私の名前も出てる!私はドンソクの妻よ。いかにも臨月って感じだけど、肝心な時に産気づいたりはしない…かも。

ホームレスの男
俺、見るからに小汚い風体なのに、駅員だの乗務員だのを擦り抜けてよく乗れたよなあ…

なんか感染してる感じの少女
そんなの簡単よ。私なんて発車まぎわに跳び込んじゃった。というわけで、ウガアアアアアアアアアア!
(そこらの人を噛む)
(噛まれた人がもっと大勢の人を噛む)
(なんかもう噛んだり噛まれたりすごいことに)

乗客
ぎゃーとにかく必死で他の車両に逃げるぞードア開けっ放しでーまだ発車したばかりで全速じゃないけど跳び下りたりもしないぞー

逃げる乗客の群れは遂に主人公たちの乗っている車両に達し、やっと誰かがドアを閉める。数人が懸命にドアを押さえていると、不意にコン・ユが何かに気づく。

コン・ユ
おい、奴らはドアを開けられないみたいだぞ。いや別に根拠はないけど、この仮説を試してみよう。最悪、奴らが入って来てみんなロクでもない死に方をするだけだし。

チョン・ユミ
ほんとだ!あと、ゾンビは目に見える人間しか追いかけないみたい。濡れた新聞紙をドアのガラスに貼っておけば大丈夫よ。

マ・ドンソク
このデジタル時代にも新聞の存在意義はあったわけだな!

車掌
(車内アナウンス)
乗客の皆様、落ち着いてください。若干ゾンビ気味のお客様もいらっしゃいますが、乗務員および運転士は平常通り業務を行なっております。それでは釜山到着まで、限りある命を心正しくお過ごしください。
(間)
この列車は軍による救助活動のため、臨時停車をいたします。では軍人さんが熱いお茶とお弁当を持って助けに来るまで、テレビをご覧ください。

テレビのニュースキャスター
臨時ニュースをお伝えします。現在、韓国全土に、狂躁性ウィルスが蔓延しています…その名もビーバーフィーバー!という冗談はさておき、全てはアンダーコントロールです。パニックになったり、そこら中に放火したり、経済活動を破壊して回ったりする必要はありません。決してそのようなことをしないでください。全ては超順調です。

乗客全員のスマホの画面が突然明るくなり、状況は全く順調ではなく社会の全てが完全に狂っていることを示すテキストメッセージやツイートが飛び込んで来る。

最低ビジネス野郎
(眉を曇らせ)
いかんな…オフィスから「ウガー、ウガー、ひーやめてくれー、ウガー、脳ヲ食ワセロー」みたいな文面のメールが10通も届いたぞ。こりゃ大変なことになってるらしい。

コン・ユ
そうだ、母さんに電話しなきゃ。
(する)
母さん、そっちはどうなってる?

コン・ユの母
(電話で)
私は大丈夫だけど、近所の皆さんが何だか…急に噛み付いてきて嫌だわあ。
(間)
母さんのことは心配しないで、とにかくスーアンの母親に会うのよ。
ああああああの糞ビッチマンコ女陰ビッチにウガアアアアア!
(電話が切れる)

コン・ユ
やれやれ、少なくとも母さんはいつも通りだな。安心したよ。

屋外。新しい駅

列車は不気味なほど人影の無い駅に停まり、乗客は怖々ホームに降り立つ。

マ・ドンソク
まさかこれで助かったなんて思ってないよな?映画の題が Train to Busan (『釜山行き列車』)なのに、まだ半分しか来てないじゃないか!だからこれで終わりのはずがない。

コン・ユ
いやいや大丈夫さ。軍隊はどこかでじっと待ってくれてるんだよ。ほら、あの階段の下とかさ!さあ行こう、エスカレーターに乗るのもいいかな、だって途中で急に逆戻りしたくなって、途端に文明の利器が死の罠と化す、なんてことがあるはずないじゃないかアハハハ…って、
オゥファーーーーック!ゾンビィソルジャーズ!シィーーーット!

ゾンビが怒涛のように襲いかかってくるが、ゾンビ兵士はたとえヨダレを垂らしながら痙攣していても銃器だけはしっかり保持して離さないので、主人公たちは豆鉄砲ひとつ入手できず、凶悪なゲームバランスは絶対に変わらない。

野球少年
ひえええ僕がこのドアをロックしている間にみんな列車に戻るんだ!

コン・ユ
そんなチャチな錠一つでゾンビの大群が抑えられるはずないだろ!

マ・ドンソク
たった三人でゾンビを100体ぐらい押し戻してる最中に言うんじゃねえよ!

三人は遂にドアをロックして、逃げる!しかし約二秒後にゾンビの群れはガラスを突き破って雪崩れ込んでくる!つまり三人の努力は全く無駄だったのだが、なぜか他の人々より先に彼らは別の列車に逃げ込む事に成功する。

野球少年
社会が崩壊しても何故か使えるスマホのおかげで、何両か先の客車にチョン・ユミとキム・スアンと老姉妹の片割れとホームレスのおっさんがいるって分かったよ。それから例の最低ビジネス野郎その他の人々はさらにその先の先頭車両にいる。あと可愛い犬の動画を見つけたから、みんなで見て和もうか。

コン・ユ
では敏腕ファンドマネージャーの私が最も合理的な作戦を提案しよう。一番人数の少ない俺たち三人が、ゾンビがギッチリ詰まった客車を力ずくで突破してみんなに合流する!

マ・ドンソク
よし、じゃあ身支度だ!俺は腕全体を守ってくれるブレザーを捨てて二の腕にテープを巻き、上腕はむき出しで行くぜ!

ステルス、頭脳プレイ、鈍器攻撃などを使い分けて三人は残りの主要キャラに合流し、彼らは一緒に先頭集団の所までたどり着くが、彼らは内側からドアを封鎖していた!

マ・ドンソク
急げ、俺一人じゃゾンビを抑えきれない!…と言いつつ結構なんとかなってる気もするが、それは秘密だ…なんて言ってたら、うわー手を噛まれたぞファーック!

チョン・ユミ
ノォーーー!脇役がカッコ良く犠牲になる場面は絶対あると思ってたけど、やっぱりノォーーー!でもこれで残りの脇役はちょっとだけ寿命が延びたのねー!

マ・ドンソク
なんか噛まれて更に強くなった気がするぜ!一人で10体以上のゾンビを華麗に抑えちゃったりなんかしちゃったりして!

コン・ユ
とはいえ限界は来るのであった!ここは奴に任せて先に行くぞ!

ついに主人公たちが先頭集団の車両に入り、ドアを閉める。マ・ドンソクは食われる。

最低ビジネスマン
彼らは信用できんな。感染してるかもしれないじゃないか。一つ前の車両に隔離しよう。

野球少年
噛み跡があるかどうかぐらい、見れば分かるだろ!あ、でも前に行けばその分、ゾンビから遠ざかるよね。じゃあいいや。

主人公たちは
嬉々として渋々スキップしながら足を引きずって次の車両に行く。

老姉妹その1
あら、老姉妹その2がゾンビの群れの中にいるわ。思えば、いつも先を越される人生だった。今度も私の負け…にはせんのじゃーーー!

老姉妹その1が呼び入れたゾンビの群れは、残っていたセリフのない乗客を全滅させる。

車掌
(スピーカー越しに)
乗客の皆様、前方の線路が封鎖されているようですが、幸い操車場に到着したので色々と選択肢が増えました。操車場の手前で止められずに済んで良かったですね。それでは残っている男の中で最年長の私が、一人で車外に出て替わりの列車を探して来ます。そりゃもう端役とは思えんほどヒロイックに!

屋外。操車場
車掌は端役らしからぬ身のこなしで数体のゾンビをやり過ごし、新しい列車を見つけて徐行させながら乗客たちが来るのを待つが、まさにその時…

ぼうそうきかんしゃトーマス(炎上中)
ぼいらーがばくはつしてこっぱみじんだぞーー!

暴走列車は今まで乗ってきた列車に突っ込み、全てを派手にぶっ壊す。ホームレスの男は勇敢にも自らを犠牲にしてコン・ユ、キム・スアン、チョン・ユミを助けるが、最低ビジネスマンは勇敢にも野球少年・少女を犠牲にして自らを助ける。

最低ビジネスマン
まだまだ!次は妙に頑張る車掌も殺さんとな。最低野郎の名にかけて!

最後の生き残りになったコン・ユ、キム・スアン、チョン・ユミは、新しい列車を必死に追いかけ、なんとかゾンビの群れより先に乗り込む!しかしゾンビは列車の後端に掴まり、さらにそこに大量のゾンビがしがみついて列車の後方にゾンビの塊ができる。コン・ユは必死にゾンビの手を叩き潰そうとする。

コン・ユ
(殴ったり叩いたりしながら)
なんでこの映画には刃物が一本も出てこないんだよ!日本刀とは言わないけど、せめて包丁ぐらいあってもいいだろ!

それでもなんとかゾンビを引き剥がすことに成功する。主人公たちはやっと一息つくが、その後にはラスボスこと最低ビジネスマンとの対決が控えていた!

最低ビジネスマン
いいタイミングで私も噛まれたのでゾンビ化してお前らを食ってやる。さあ食うぞ。だがその前に私のバックストーリーを語るとしよう。

コン・ユ
だめだ、恐怖で動けない!登場人物の五割ぐらいお前のせいで死んでるから、今すぐ列車から突き落としてもいいと思うんだけど、とりあえず話は聞いてやるからせいぜい観客の同情を集めるんだな。

コン・ユは最低ビジネスマンが遂にゾンビ化するまで、わざわざ待ってやる。それから二人は戦い、コン・ユが勝つが、噛まれてしまう。

コン・ユ
…って、主役死んじゃうの?ハリウッド映画なら絶対助かるとこだけど?それはともかくユミ、「ブレーキ」って書いてあるこの大きいレバーがブレーキだからね。分かるかい?

チョン・ユミ
あのねえ、妊婦だって字ぐらい読めるわよ。

コン・ユはゾンビ化する前に自ら線路に身を投げる!悲しみに暮れるチョン・ユミとキム・スアンは半壊して燃え続けるバリケードに辿り着いて列車を降りるが、そこには大量の死体が散らばり、地獄はまだ続くのだった。

チョン・ユミ
えーと。どうやら真っ暗なトンネルを歩いて抜けるしかないんだけど、今までの展開からして中にはどうせゾンビの佃煮状態だと思うな。じゃあ行くよスアン。

トンネルの反対側では、ゾンビ化していない兵士たちが銃を構え、歩いてくる影が敵なのか味方なのか、そして元祖『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』の結末をオマージュすべきかどうかを決めかねている。

キム・スアン
ここで例の学芸会の歌を歌えば人間だって分かってくれるよね。
(歌う)

兵士
が…学芸会の歌!おれに小学校時代を思い出させるんじゃねえええ!
(撃つ)


END
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