仮想温泉ぷろめてうす

 

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天窓のある、開放的な大伽藍。このぐらい壮大な建物になると、「かこーん」という桶の音も、親子連れの笑い声も、エコーのスケールが違うので不思議に神々しい。遠くは湯気に霞んで見えない。時に靄が晴れ上がると、はるかに見えるのは実物とみまごうばかりに巨大な富士の壁画…ではなくて富士そのものである。樹海の真ん中にこんなものを作ってしまった主人の酔狂のおかげで、風呂に漬かりに来て遭難しかかる客が毎年何人か出るらしいが、刻々移り変わる富士の眺めはそれを補って余りある---かもしれない。春や夏には森の精霊が大気に満ちあふれ、夕暮れと夜明けには富士も湯船も人々も真っ赤に燃え上がる。浴槽につかってぼんやり見上げると、ぐるりを天窓に囲まれたドームにはミケランジェロの有名な天井画が複製されていて、やたらと格調高いのだが、よく見るとアダムの腋の下にツバメが巣をかけていたりして、ひそかにマヌケだ。
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