書き上げたばかりの百枚近いワープロ原稿を大急ぎで二部コピーせねばならなかった三年前の午前六時、セブンイレブンの店内。朝焼けが東の空を恐ろしい速さで染め上げてゆく。何の前触れもなく急停止したコピー機を扱いかねて私は店員を呼んだのだが、原因は杳として知れない。用紙、トナーともに問題なし。紙が詰まっているわけでもない。とうとうカウンターにいた店員が二人ともやってきて本格的に機械をバラし始めたので、私は場所を空けようと原稿と途中までのコピーをすべて抱えて数歩後ろに下がったのだが、その瞬間私は全てを理解した。

 …コイン切れ…

「行き詰まったときは一歩下がって問題を見直すのがしばしば有効である」「明らかになってみれば、真実とは極めて明快なものであることが多い」…瞬間、そんな真理が黒地に青空の透ける極太明朝体で大天使の翼のように閃くのを感じながら私はそのまま自動ドアまで忍び足で十数歩後じさり、くるり身を翻すともう一軒のコンビニ目指し脱兎のごとく駆け出してゆく…